改訂新版 世界大百科事典 「グージョン」の意味・わかりやすい解説
グージョン
Jean Goujon
フランス・ルネサンスの彫刻家。生地,生没年は不詳。1540年ごろからルーアンで活動していた記録があり,おそらく1510年ごろ生まれ,若年にイタリアに赴き,直接にローマ時代やルネサンスの美術に接して学んだと推定される。作品はほとんどすべて建築装飾として制作されている。44年パリで建築家レスコに協力し,サン・ジェルマン・ローセロア教会のジュベ浮彫装飾を制作,そのひとつ《ピエタ》にはパルミジャニーノの版画の影響がみられる。49年,アンリ2世のパリ入市の式典装飾として制作された建造物のひとつ〈イノサンの泉〉を飾る浮彫パネルを完成した。長身のニンフのしなやかな姿態が長方形の枠にみごとに収められ,繊細な刻線の浅浮彫で表現されている。48年以降レスコに協力してルーブル宮殿の建築装飾に参加する。とくに50-51年に制作した〈カリアティード〉(女性人像柱)4体はグージョンの数少ない丸彫像の作例で,イタリア・ルネサンスの範例を越えて古典古代風に近づく表現を示す。同宮殿の建築装飾には62年まで従事し,多額の支払を受けている。またウィトルウィウスの《建築十書》のフランス語訳初版(1547)のために木版挿絵を制作。プロテスタントであったため迫害をうけ,62-63年ごろボローニャに亡命し,その地で68年までに没したと推定される。
執筆者:冨永 良子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報