日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケベック法」の意味・わかりやすい解説
ケベック法
けべっくほう
Québec Act
ケベック条例とも訳される。1774年、イギリス議会が10年前に新しく植民地としたケベック統治のために制定した法律。ケベック植民地の境界を著しく拡大し、イギリス刑法、フランス民法の施行を決め、カトリック教徒が官職につくことを認め、カトリック聖職者の特権や荘園(しょうえん)制を温存した。議会制についてはなにも触れていない。ケベック法による統治は、のちにアメリカ合衆国を形成することになった南のイギリス植民地におけるそれとあまりに違っていたために、南の植民地人の憤激を買い、翌年の独立戦争勃発(ぼっぱつ)の一因となった。ケベック植民地も独立への戦いに参加することを求められたが、ケベックのフランス系カナダ人は、ケベック法による温情主義的統治を好んで、独立革命に参加しなかった。
[大原祐子]