改訂新版 世界大百科事典 「ケワタガモ」の意味・わかりやすい解説
ケワタガモ (毛綿鴨)
eider
カモ目カモ科ケワタガモ類の総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間にはオオケワタガモSomateria mollissima(英名common eider),ケワタガモS.spectabilis(英名king eider),メガネケワタガモS.fischeri(英名spectacled eider),コケワタガモPolysticta stelleri(英名Steller's eider)の4種があり,いずれも北極圏かその近くで繁殖する。繁殖期以外は主として海上にすみ,冬期は多少南方へ移動する。主としてツンドラの池や川岸や岩陰で繁殖し,オオケワタガモは集団で営巣する。地面のくぼみなどに1腹6~8個の卵を産むが,おそらく捕食者の目を逃がれるために,卵は雌親の綿羽で包まれる。この綿羽を集めて防寒用の衣類に用いることが古くから行われている。
ケワタガモは全長約56cm。繁殖期の頭上から後頸(こうけい)にかけて灰青色で,顔は淡緑色,橙赤色の大きなくちばしと白いのどは黒い羽毛で縁取られている。胸部と上背は白いが,胴の大部分は黒い。足は暗赤色。エクリプス(非繁殖羽)の雄はくちばしと足以外はほとんど黒色。雌は褐色に黒褐色の斑がある。日本では迷鳥としてきわめてまれに渡来するにすぎない。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報