騎兵(読み)きへい(英語表記)cavalry

精選版 日本国語大辞典 「騎兵」の意味・読み・例文・類語

き‐へい【騎兵】

〘名〙
騎馬の兵。
続日本紀‐文武三年(699)二月戊申「詔免駕諸国騎兵等今年調役
② もと陸軍兵科一つ。騎馬の速度衝撃力による戦闘ほかに、通信偵察捜索などの行動をする兵。騎卒。〔和蘭字彙(1855‐58)〕
※博物新編訳解(1868‐70)〈大森秀三訳〉四「曾て数の馬兵(キヘイ)ありて同く行く、群狼出でて之れを繞(めぐ)る」

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デジタル大辞泉 「騎兵」の意味・読み・例文・類語

き‐へい【騎兵】

騎馬の兵。
陸軍で、騎馬による戦闘のほか、その機動力を活用して連絡・偵察などを行う兵。また、その兵科。
[類語]軍人兵士兵隊兵卒つわもの戦士闘士戦闘員従卒士卒将卒精兵弱兵雑兵ぞうひょう新兵初年兵古兵ふるつわもの老兵敵兵・敗残兵・伏兵番兵歩哨斥候歩兵砲兵工兵水兵海兵セーラー憲兵

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「騎兵」の意味・わかりやすい解説

騎兵
きへい
cavalry

馬に乗って戦う兵士。騎兵は,機関銃や速射砲が登場するまで,古代から戦史を通じて大きな役割を果してきた。騎兵の役割は,その機動性を発揮して偵察,奇襲,戦線突破から敵補給線攪乱まで,敵の背後や側面を脅かすことであったが,歴史を通じて最も大きな任務は,主力部隊である歩兵の,脆弱となる側面を守ることにあった。フリードリヒ2世 (大王) ,ナポレオン1世らは,騎兵を巧みに使って勝利を収めた。第1次世界大戦ではドイツ軍が西部戦線で7万人の騎兵をもち,騎兵 10個師団のフランス軍,1個師団のイギリス軍と対峙,東部戦線では,ロシア軍が騎兵 24個師団を投入した。しかし,速射できる小火器を装備して塹壕にこもる部隊を騎馬で攻撃するのは自殺行為であるため,騎兵隊は馬を装甲車両に替え,「装甲された騎兵」 armoured cavalryとか「機械化された騎兵」 mechanized cavalryと呼ばれるようになったが,やがて cavalryという言葉も使用されなくなった。第2次世界大戦で,アメリカの騎兵がフィリピンで日本軍の進攻を迎撃したのが,戦場に出た最後である。ソ連は 39個師団の騎兵を用い,主として装甲部隊に不適な地形に投入した。アメリカでは,1950年に騎兵は兵科として廃止され,今日ではヘリコプタを騎馬代りに使用する騎兵連隊が存在する。

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普及版 字通 「騎兵」の読み・字形・画数・意味

【騎兵】きへい

騎馬の兵。〔史記、嬰伝〕嬰少(わか)しと雖も、然れども數(しばしば)力戰す。~中騎兵を將(ひき)ゐて楚騎を陽の東にち、大いに之れを破る。

字通「騎」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「騎兵」の意味・わかりやすい解説

騎兵【きへい】

陸軍兵科の一つ。乗馬した戦闘兵種。古代から存在し,封建時代は鎧(よろい)などを装備し槍(やり),刀を用いた騎士が戦闘の主体であった。近代でも,その機動力によって,正面突破や迂回(うかい)包囲のために使われる攻撃兵種となり,また偵察,連絡に当たった。米国において1830年代対インディアン作戦のため正規の騎兵連隊が編成され,南北戦争においても重視された。しかし火力・機械力の進歩に伴う機械化部隊の発達で,ほとんど姿を消した。
→関連項目騎兵銃師団

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「騎兵」の意味・わかりやすい解説

騎兵
きへい

各兵乗馬により編制される陸軍七兵科の一種。軍刀、槍(やり)、拳銃(けんじゅう)、騎銃、機関銃などで武装し、迅速な機動性を駆使して、敵情捜索、地形偵察など情報収集をおもな任務とした。実戦では、敵への奇襲戦、追撃戦や退路遮断などにその威力を発揮した。戦闘手段としては集団の衝突力を利用し、軍刀・槍によって襲撃を行う乗馬戦と、騎銃・機関銃による火力戦を行う徒歩戦とがある。とくに乗馬戦は古来から多用され、乗馬戦に優勢を占める者が勝利を得た事例は少なくない。しかし、20世紀に入り重火器、自動車、戦車、飛行機などの発達によって騎兵の能力は著しく制約されることになった。戦闘集団としての騎兵は、第一次世界大戦を最後の活躍舞台とし、第二次世界大戦においては実戦参加の機会をほぼ完全に失うことになった。旧日本陸軍では、遠距離偵察や戦闘を任務とする騎兵師団と、近距離偵察や小規模戦闘を任務とする騎兵旅団とに分けられていた。

[纐纈 厚]

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世界大百科事典 第2版 「騎兵」の意味・わかりやすい解説

きへい【騎兵 cavalry】

軍馬に乗り戦闘する兵種の一つ。時代とともにその使用兵器,役割等が変遷し,現代では軍馬は原動機を使用する兵器に代わり騎兵の名称もなくなりつつあるが,戦場をより速く機動して戦闘するという騎兵の機能は別の形態で保持されている。
[ヨーロッパ]
 古代においては,騎兵の任務は軍の主兵である歩兵集団の決戦のための捜索,警戒が主であったが,ハンニバル,アレクサンドロス大王は騎兵の軽快性を活用した作戦を指導してしばしば大勝した。

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世界大百科事典内の騎兵の言及

【ウマ(馬)】より

…その最初の証拠が現れるのは前1300年代末のころである。エジプトの新王国第19王朝セティ1世時代,ヒッタイト人を撃退する図で,ヒッタイト軍の中には戦車に混じって数少ないが騎兵の姿が描かれている。エジプト軍は弓を引く戦士を乗せた戦車で示されている。…

【戦争】より

…【大林 太良】
【ヨーロッパ】
 巨視的に見て,ヨーロッパ世界での戦争の様相が大きく変化する時期として,14~15世紀の百年戦争,18世紀末から19世紀初めのナポレオン戦争,そして20世紀の第1次世界大戦をあげることができるであろう。
[重装歩兵戦術]
 ギリシアでは初め貴族からなる騎兵や戦車兵が勝敗の鍵を握っていたが,民主政治の成立と並行して一般市民からなる重装歩兵戦術が主力としての地位を確立する。3回にわたったペルシア戦争(前492,前490,後480)で歩兵密集戦列の優位が確証され,この戦法は決戦の基本的な型としてローマに受け継がれ,かつ大規模に組織された。…

【番頭】より

…この番頭は奉公衆の成立期である足利義教のときから,1番畠山,2番桃井,3番上野または畠山,4番畠山,5番大館の諸氏に一定し,これが番衆の譜代的な固定性と相まって家族的な信頼感情を育て,番ごとの連帯性を支えて後世の番衆制度の範となった。【福田 豊彦】 戦国・江戸時代には武家の職名あるいは格式の一つで,一般に侍組(騎兵)の頭(侍大将)をいう。足軽,同心,徒士(かち)などの組(歩兵)の頭(足軽大将)である物頭の上位,家老につぐ地位にあった。…

【陸軍】より

…エジプトとの戦いでは2輪式の戦車3500両,歩兵1万7000人を繰り出した。 白兵主体の戦闘の期間,陸軍は歩兵騎兵との戦場における主導権の争いの歴史でもあった。歩兵は〈方陣(ファランクス)〉によって,強力な盾と長槍による突進力の威力を発揮して,陸軍の主兵としての地位を保っていたが,前8~前7世紀ころから,騎兵の機動力によって圧倒されるようになった。…

※「騎兵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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