ケンドラー(英語表記)Johann Joachim Kändler

改訂新版 世界大百科事典 「ケンドラー」の意味・わかりやすい解説

ケンドラー
Johann Joachim Kändler
生没年:1706-75

ドイツマイセン磁器最大の陶彫家。ドレスデンに近いフッシュバハに牧師の子として生まれ,1723年ころにドレスデンの宮廷彫刻家B.トーメのもとで彫刻の修業を重ね,30年ころ独立。翌年アウグスト2世の命により王立マイセン窯の陶彫家となった。彼は先輩キルヒナーをしのぐ技量を発揮し,キルヒナーの去ったあと同工房の首席陶彫家となり,王の〈日本宮〉を飾るために白磁の大きな動物や鳥を多数制作した。その若干がドレスデンのツウィンガー陶磁博物館に陳列されている。33年,王の死を契機として彼はこれら大陶彫の制作を捨てて彩色の小彫像の制作に転向し,《イタリア喜劇役者》をテーマとした人物小像,《ザクセンの鉱夫たち》《猿のオーケストラ》などを作った。ヨーロッパ陶芸史上,置物用の小彫像を制作した最初の陶彫家で,他国に与えた影響は大きい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケンドラー」の意味・わかりやすい解説

ケンドラー
けんどらー
Johann Joachim Kändler
(1706―1775)

ドイツの陶工。ザクセンのフィッシュバッハ生まれ。1733年にマイセン窯に招かれ、以後、死に至るまで同窯の原型製作者(モデルマイスター)として活躍、マイセンの名声を高めるのに大きく貢献した。とくに、スワン・サービスとよばれる白地多彩を施した豪華なディナー・セット、またイタリア喜劇の登場人物をモチーフとした磁器の小像群は、当時のロココ趣味を反映した秀作で、近世の陶磁史に大きな影響を与えた。ザクセン侯アウグスト3世の計画した「日本宮殿」のために多くの等身大の動物像も手がけたが、オリジナルの状態では現存していない。また同王の巨大な磁製騎馬像も、長い年月を費やしながら未完に終わった。

友部 直]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケンドラー」の意味・わかりやすい解説

ケンドラー
Kändler, Johann Joachim

[生]1706. フィッシュバハ
[没]1775.5.18. マイセン
ドイツの工芸家。宮廷彫刻家 B.トーメの弟子。ドレスデン宮殿の装飾に従事しアウグスト2世に認められた。 1733年マイセン王立磁器工場の磁器彫刻の首席原型作者,40年には美術総監となり,マイセン磁器発展に尽した。主要作品は多くの磁製ロココ彫刻,ドレスデンの日本宮殿のための動物像や東洋人の胸像など。

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百科事典マイペディア 「ケンドラー」の意味・わかりやすい解説

ケンドラー

ドイツの磁器の原型製作者。彫刻家ベンヤミン・トーメの弟子となり,ドレスデン宮殿内の装飾彫刻でアウグスト2世に認められ,1731年マイセン磁器の原型製作者に任命された。優美華麗な人形など磁器彫刻の基礎をつくり,ロココ風食器も製作した。

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