改訂新版 世界大百科事典 「ケン化」の意味・わかりやすい解説
ケン(鹼)化 (けんか)
saponification
エステルをアルカリ溶液とともに加熱すると,加水分解されて脂肪酸の金属塩とアルコールを生ずる反応。たとえば脂肪酸エステルである油脂は,水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ水溶液)とともに加熱することにより,セッケンとグリセリンになる。
これはセッケンの製法として,古くから工業的に用いられているもので,ケン化の名称もこれによる。現在の工業的な油脂の加水分解は,高温・高圧で水蒸気を加えるか,分解剤を用いる方法で脂肪酸とグリセリンを製造しており,セッケンも脂肪酸とアルカリ水溶液の中和によって製造されている。
ケン化はエステル化の逆反応であって,水酸イオンは反応速度を接触的に高めるものである。水素イオンの存在によっても促進されるが,アルカリのほうが生じたカルボン酸を中和して平衡を破る働きがあり,はるかに促進作用が大きいので実用的には有利である。
油脂あるいは蠟1gをケン化するのに要する水酸化カリウムKOHのmg数をケン化価saponification valueという。高分子量のグリセリドや,高級アルコール,炭化水素などのケン化されにくい成分を含む油脂ほど低い値をとる。酸価とともに油脂,蠟の特徴を示す数値として重要なものである。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報