けん化価(読み)けんかか(英語表記)saponification value

日本大百科全書(ニッポニカ) 「けん化価」の意味・わかりやすい解説

けん化価
けんかか
saponification value

油脂またはろうの特数の一つで、試料1グラムを規定の方法に基づいて完全にけん化するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。普通の油脂のけん化価は190前後であるが、やし油パーム核油のように分子量の小さい脂肪酸を含むものは240~250と高く、反対菜種(なたね)油、ひまし油肝油などは170~180と低い。またろう類のけん化価はさらに低く、だいたい150以下である。油脂中に不けん化物が存在するとけん化価は低くなるが、脂肪酸の含有量が多くなると逆に高くなる。

[篠塚則子]

測定法

日本油化学協会制定の「基準油脂分析試験法」に詳しく記述されている。大要は、試料1.5~2グラムを耐アルカリフラスコに量り取り、N/2エタノールカリ(水酸化カリウムのエタノール溶液)25ミリリットルを正しく加える。フラスコに冷却器をつけ、ときどき振り混ぜながら、穏やかに加熱してけん化させる。30分沸騰させたのち、ただちに冷却し、内容物が固まらないうちにフェノールフタレイン指示薬を加えてN/2塩酸標準液で残ったアルカリを滴定し、けん化に要した水酸化カリウム量を求める。けん化価より、中性油脂の分子量、中性油脂から得られる脂肪酸の平均分子量収率グリセリンの収率を計算することができる。

[篠塚則子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「けん化価」の解説

けん化価
ケンカカ
saponification value

油脂1 g を完全けん化するのに要する水酸化カリウムKOHの質量(mg)の値をいう.酸価エステル価との和に相当する値.0.5 mol L-1 水酸化カリウムのアルコール溶液で試料をけん化したのち,0.5 mol L-1 塩酸で過剰の水酸化カリウムを中和滴定して求める.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「けん化価」の意味・わかりやすい解説

ケン(鹸)化価【けんかか】

油脂または蝋1gをケン化するに必要な水酸化カリウムのミリグラム数。含有する脂肪酸の種類によって異なり,脂肪酸の分子量の小さいものほどケン化価は大きくなり,また炭化水素高級アルコールなどケン化されない物質が含有されている場合には小さくなる。
→関連項目鯨蝋

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改訂新版 世界大百科事典 「けん化価」の意味・わかりやすい解説

ケン(鹼)化価 (けんかか)

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栄養・生化学辞典 「けん化価」の解説

けん化価

 油脂の性質を示す指標の一つで,油脂1gをけん化するのに必要な水酸化カリウムの量をmgで表した数値.含まれている脂肪酸の平均の分子量を推定できる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のけん化価の言及

【ケン化(鹼化)】より

…水素イオンの存在によっても促進されるが,アルカリのほうが生じたカルボン酸を中和して平衡を破る働きがあり,はるかに促進作用が大きいので実用的には有利である。 油脂あるいは蠟1gをケン化するのに要する水酸化カリウムKOHのmg数をケン化価saponification valueという。高分子量のグリセリドや,高級アルコール,炭化水素などのケン化されにくい成分を含む油脂ほど低い値をとる。…

※「けん化価」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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