日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲイキー石」の意味・わかりやすい解説
ゲイキー石
げいきーせき
geikielite
チタン鉄鉱のマグネシウム置換体。チタン鉄鉱系鉱物の一員。チタン鉄鉱との間に広範囲に固溶体が存在する。自形は六角板状あるいは柱状。独立した結晶の場合は多く明瞭(めいりょう)な輪郭がみられるが、塊状となると明瞭でない。苦灰岩起源のスカルン鉱物の一つとしてその中の少量成分をなす。超塩基性岩の少量成分をなし、その中の方解石脈中に産する。キンバレー岩やある種のカーボナタイト(炭酸塩鉱物からなる火成岩)の構成成分をなす。日本では、岩手県宮古市根市(ねいち)や岐阜県揖斐(いび)郡揖斐川町春日美束(かすがみつか)の苦灰岩起源のスカルン中に産する。
共存鉱物は苦土橄欖石(かんらんせき)、苦土尖晶石(せんしょうせき)、透輝石、斜ヒューム石、ブルース石、蛇紋石、方解石、苦灰石など。同定はチタン鉄鉱に似るが、粉末の色が真っ黒でなく、どこかに紫色味を帯びた暗灰色となる。なお純粋な合成MgTiO3は黄褐色の粉末となるが、このような純粋なものが天然に産するという報告はない。命名はスコットランドの地質学者でイギリス地質調査所の所長を務めたアーチボルド・ゲイキーArchibald Geikie(1835―1924)にちなむ。
[加藤 昭]