コウヨウザン(読み)こうようざん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウヨウザン」の意味・わかりやすい解説

コウヨウザン
こうようざん / 広葉杉
[学] Cunninghamia lanceolata (Lamb.) Hook.

スギ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の常緑高木。中国では本種を杉と書き、和名の杉とは異なる。別名オランダモミ、リュウキュウスギ。大きいものは高さ35メートル、直径1メートルに達する。樹皮は赤褐色で縦に裂け、スギに似ている。枝は水平に長く伸びる。葉は互生するが、枝の両側にやや平らに並び、硬質で鎌(かま)状の披針(ひしん)形をなし、先は鋭くとがる。雌雄同株。4月に開花する。雄花楕円(だえん)状球形で枝先に集まり、雌花は卵状球形で、長さ3~4センチメートル、枝先に1個ずつつく。球果は卵球形、鱗片(りんぺん)は革質で先はとがり、外方に反り返る。種子は1鱗片に3個ずつつき、翼がある。中国大陸南部、台湾に自生する。日本には江戸時代に渡来し、仙台市以南の社寺境内、公園、学校、庭園などに植栽される。材は建築、屋内工作、箱、棺、天井板、マッチの軸木、農具などに用いる。

[林 弥栄 2018年6月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウヨウザン」の意味・わかりやすい解説

コウヨウザン(広葉杉)
コウヨウザン
Cunninghamia lanceolata; China fir

スギ科の常緑高木で,中国の中南部原産。古くから日本各地に栽培されている。樹高 30m,直径 1mに達し,小枝は垂れ下がるのが普通である。樹皮はスギに似ている。葉はやや曲った線形光沢があり先が鋭くとがる。枝に密集してつき,左右に分れる傾向があるので,一見羽状にみえる。球果は卵形で長さ4~5cm,枝先につく。種子は長さ5~7mmで,狭い翼がある。シロアリの害に強いので,建築,家具,船,箱類などの用材にされ,また樹形が美しいのでよく庭園などに植えられる。オランダモミなどの名もある。

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百科事典マイペディア 「コウヨウザン」の意味・わかりやすい解説

コウヨウザン(広葉杉)【コウヨウザン】

中国南部原産のスギ科の常緑高木。日本でも古くから植栽され。特に社寺に多い。葉はかたく,鎌状の披針形で先端が鋭くとがる。雌雄同株。4月に開花する。果実は卵状球形で,鱗片の先が鋭くとがり,外にそり返る。材を建材,器具とする。

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世界大百科事典(旧版)内のコウヨウザンの言及

【スギ(杉)】より

…このような普通名の混用は英語のcedarについてもいえ,cedarそのものは,もともとヒマラヤスギ属の樹種ヒマラヤスギやレバノンスギを指すが,エンピツビャクシンred cedar,オニヒバincense cedar(以上ヒノキ科)などの,材に樹脂の多い針葉樹にも広く使われるようになった。また,中国で〈杉〉といえばスギ科のコウヨウザンをさすが,スギ科樹木のほかに冷杉,雲杉(以上マツ科)などのように語尾に杉の字のつくものは,たいてい針葉が松と柏(かしわ)の中間ぐらいの長さのものである。【浜谷 稔夫】
【民俗,伝承】
 《万葉集》に〈神奈備(かんなび)の三諸(みもろ)の山に斎(いわ)ふ杉〉とよまれているように,杉はまっすぐ高く伸びる目だつ木であるから,古くから神を祭る神聖な木とされた。…

※「コウヨウザン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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