ココシュカ(読み)ここしゅか(英語表記)Oskar Kokoschka

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ココシュカ」の意味・わかりやすい解説

ココシュカ
ここしゅか
Oskar Kokoschka
(1886―1980)

オーストリアの画家、劇作家。3月1日ペヒラルンに生まれ、ウィーン工芸学校に学んだ。1908年ごろからアール・ヌーボーの影響を脱して表現主義の傾向に向かう。10年ベルリンの「シュトゥルム(嵐(あらし))」のサークルに加わり、「絵筆占師」の異名をとった独特の心理的肖像画によって注目される。第一次世界大戦に従軍して戦傷を受け、19年ドレスデン美術学校教授、24~31年中近東、北アフリカ、ヨーロッパ各地を旅行して、広大な視野をもつバロック的な風景画を描く。37年ナチスによって作品を没収され、38年ロンドンに亡命。同地でギリシア神話をモチーフとする作品を描いて、戦争とナチスへの抗議を行った。肖像、風景、神話のほかに幻想的な絵も描いているが、鮮やかな色彩の諧調(かいちょう)を特色とし、思想的な内容を盛った石版画の連作も試みている。46年ウィーン名誉市民となり、53年以降はスイスのレマン湖畔のモントルーに住み、80年2月22日同地に没した。

[野村太郎]

 劇作家としては表現主義演劇の先駆者の一人で、1907年執筆の『スフィンクスとでくの坊』『人殺し、女たちの希望』がある。前者斜陽にたつウィーン社会の心理を男女間の性的葛藤(かっとう)劇によって喜劇的に、後者はそれを悲劇的に暴き、上演の際スキャンダルを巻き起こした。ほかにエロスタナトスを主題にした『燃えるいばらの茂み』(1911)、『オルフォイスとエウリディケ』(1918)、晩年の叙事演劇『コメニウス』(1973完成)がある。

[土肥美夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ココシュカ」の意味・わかりやすい解説

ココシュカ
Kokoschka, Oskar

[生]1886.3.1. ペフラルン
[没]1980.2.22. モントルー
オーストリア生れのイギリスの画家,劇作家,舞台美術家。 1905年から3年間ウィーンの美術工芸学校で基礎的な教育を受け,その間 G.クリムト,E.ムンクらの絵画に影響されて表現主義的な様式を発展させた。 10年からベルリンで「」のグループに参加し,12年にこの運動の主導者 H.ワルデンの画廊で個展を開催。薄塗りの絵具で描かれた肖像画にはモデルの精神までを見透かすような透明度がある。 07年発表した戯曲『人殺し,女たちの希望』は,表現主義的な技法によって反響を呼んだ。 19年からドレスデンの美術学校の教授をつとめ,24年に退職。以後 31年まで各国を旅行して「町のポートレート」ともいうべき風景画を描き続けた。 38年ナチスに追われるようにしてロンドンに渡り,47年に帰化。第2次世界大戦後 46年にウィーンに名誉市民として迎えられたが,スイスに移住し,晩年までジュネーブ湖畔で制作を続けた。ほかに戯曲『スフィンクスとわら人形』 (1907) ,『オルフェウスとエウリュディケ』 (18) などがある。

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