(読み)アラシ

デジタル大辞泉 「嵐」の意味・読み・例文・類語

あら‐し【嵐】

荒く激しく吹く風。雨・雪・雷を伴う場合にもいう。暴風。暴風雨。「花に
激しく乱すもの。また、事態や社会を揺るがす重大事。「拍手の」「革新の」「不況のが吹き荒れる」
[補説]作品名別項。→
[下接語]青嵐朝嵐小夜さよ地嵐磁気嵐砂嵐初嵐花嵐鼻嵐春嵐山嵐夕嵐雪嵐
[類語]雷雨暴風雨雨天荒れる崩れるぐずつくしける時化大荒れ荒れ模様荒天悪天候悪天雨空梅雨空雨降り雨催い雨模様遣らずの雨降雨一雨お湿り慈雨山雨小雨涙雨微雨細雨煙雨霧雨糠雨小糠雨大雨・どか雨・篠突く雨風雨豪雨強雨にわか雨通り雨村雨驟雨夕立白雨スコール照り降り雨日照り雨天気雨狐の嫁入り春雨はるさめ春雨しゅんう卯の花腐し五月雨さみだれ五月雨さつきあめ地雨長雨淫雨霖雨涼雨秋霖秋雨時雨初時雨村時雨氷雨冷雨雨氷酸性雨

らん【嵐】[漢字項目]

常用漢字] [音]ラン(呉)(漢) [訓]あらし
〈ラン〉山のみずみずしい気。「嵐気嵐翠らんすい翠嵐すいらん青嵐晴嵐
あらし〉「青嵐花嵐山嵐夜嵐よあらし

あらし[書名・絵画]

(嵐)島崎藤村の小説。大正15年(1926)「改造」誌に発表。母を失った子供たちの成長と巣立ちを見守る作者の心境を描く。
(あらし)《原題、〈イタリアTempeste》イタリアの女流詩人・小説家、ネグリの詩集。1896年刊。
(嵐)《原題、〈イタリア〉La tempestaジョルジョーネの絵画。カンバスに油彩。縦82センチ、横73センチ。牧人らしき若者と乳飲み子を抱く女性を描いたもの。ベネチア、アカデミア美術館所蔵。テンペスタ。ラ‐テンペスタ。

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精選版 日本国語大辞典 「嵐」の意味・読み・例文・類語

あら‐し【嵐】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 荒く吹く風。古くは、静かに吹く風に対し、荒い風、はげしく吹く風をいい、特に、山風や山おろしのことが多い。のち、暴風、烈風、颶風(ぐふう)などを含んで、広く強風の意に用いる。和歌では「有らじ」と掛け詞にして用いることがある。
      1. [初出の実例]「ぬば玉の夜(よる)さり来れば巻向(まきむく)の川音(かはと)高しも荒足(あらし)かも疾(と)き」(出典:万葉集(8C後)七・一一〇一)
      2. 「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ〈文屋康秀〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二四九)
    2. 特に、雨を伴う、はげしい風。暴風雨。
      1. [初出の実例]「所が其晩は風雨(アラシ)でネ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
    3. ( 比喩的に ) 社会、家庭、人生などでの、困難や争い、不和。また、大ゆれにゆれ乱れること。
      1. [初出の実例]「あいかたの女郎、身代のよいうちはうまくし給ひ、今はさぞあらしはげしく吹給らん」(出典:随筆・独寝(1724頃)下)
    4. 電磁気の擾乱(じょうらん)の現象。磁気嵐。
    5. あらし(嵐)の日
      1. [初出の実例]「嵐の前に傾城(けいせい)は気がもめる」(出典:雑俳・川傍柳(1780‐83)二)
  2. [ 2 ] 短編小説。島崎藤村作。大正一五年(一九二六)発表。男手一つで育ててきた四人の子供たちの巣立ちを適度の感傷をこめて描く。

嵐の語誌

( 1 )語源として「アラ(荒)+シ(風)」と見るのが通説であるが、アクセントから「おろし」との関係を考える説もある。
( 2 )「万葉」をはじめ歌の世界では、「やまおろし」とほぼ同義に理解されていたらしい。
( 3 )「嵐」字は本来「山気(もやのようなもの)」の意であったが、唐代には「山風」の意が見られ、仏典には「毘嵐」(猛迅風)の表記がある。日本でも平安時代の初期には「あらし」と結びついていた。


あらし【嵐】

  1. [ 一 ] 姓氏の一つ。
  2. [ 二 ] 歌舞伎俳優の姓の一つ。嵐三右衛門に始まり、おもに上方で活躍。

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普及版 字通 「嵐」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音] ラン
[字訓] あらし

[説文解字]

[字形] 会意
山+風。〔説文新附〕九下に「山名なり」とするが、山気をいい、山の嵐気を翠嵐のようにいう。〔玉〕に「大風なり」とあり、わが国では、あらしの意に用いる。

[訓義]
1. 山気、山あいのもやなどをいう。
2. 大風、あらし。

[古辞書の訓]
和名抄〕嵐 阿良之(あらし)〔名義抄〕嵐 アラシ 〔立〕嵐 アラシ・トキカゼ 〔字鏡集〕嵐 ヤマカゼ・アラシ・ヲカ

[熟語]
嵐陰・嵐影・嵐煙・嵐気・嵐光・嵐彩・嵐岫・嵐・嵐翠・嵐峰・嵐霧・嵐嶺
[下接語]
暗嵐・陰嵐・雲嵐・煙嵐・暁嵐・凝嵐・渓嵐・湖嵐・山嵐・紫嵐・春嵐・松嵐・嵐・翠嵐・青嵐・晴嵐・夕嵐・積嵐・霜嵐・朝嵐・嵐・濃嵐・浮嵐・林嵐・嶺嵐

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「嵐」の意味・わかりやすい解説


あらし
Der Sturm

ユダヤ系ドイツ人画商ヘルワルト・ワルデン (1878~1941) が主宰して 1910~32年ベルリンで発行した,前衛芸術運動を目指す雑誌名。ワルデンは,カンディンスキーココシュカなど国際的な作家を含む当時の革進的な画家を糾合して,13年展覧会開催キュビスム未来派表現主義の芸術を推進,紹介して,ドイツの新芸術運動の中心的活動を展開した。


あらし
storm

風雨が非常に強い状態。気象学では天気図に現れる独立した擾乱を意味し,大きさは問題とせず,雷雨から低気圧まで含まれる。水文学では特定地域の降雨の時間的,空間的分布の意味に用いられる。

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デジタル大辞泉プラス 「嵐」の解説

イタリア、ベネチア派の画家ジョルジョーネの絵画(1508頃)。原題《La tempesta》。遠くで雷が光る不穏な曇り空の下、牧人と思しき若者と乳飲み子を抱く女性を描いたもの。何を主題とした絵であるかについては、いまだ定説のない謎めいた作品として知られる。ベネチア、アカデミア美術館所蔵。

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