改訂新版 世界大百科事典 「コバンソウ」の意味・わかりやすい解説
コバンソウ
big quaking-grass
nodding Isabel
Briza maxima L.
南ヨーロッパから地中海沿岸地方原産の美しい穂をもったイネ科の植物で,日本では明治年間に観賞用に栽培したものから逸出して帰化植物となった。同様にして北アメリカや中国にも帰化している。砂地や乾いた草地,荒地などに生える一年草で,細い茎は高さ50cmくらいになる。葉は線形で長さは8cmくらい,毛はない。5~6月ころに大型でまばらな円錐花序を出す。花序の長さは10cmほどで,非常に細い枝を数本分かち,各枝に2~5個の大型の小穂が垂れ下がるので,小穂の重みで枝の先は下垂する。小穂は卵楕円形で,長さ12~15mm,幅は1cmくらいで,15個ほどの小花があり,熟すと淡黄緑色に銅色の光沢を帯びて美しい。和名の小判草や異名の俵麦(たわらむぎ)はこの小穂の形に由来する。同属の1種ヒメコバンソウB.minor L.は小型で淡緑色の小穂を多数つけるヨーロッパ産の帰化植物で,ヨーロッパや北アメリカでは春の牧草に利用される。コバンソウとともに,ドライフラワーにされる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報