日本大百科全書(ニッポニカ) 「コビトカバ」の意味・わかりやすい解説
コビトカバ
こびとかば / 小人河馬
pigmy hippopotamus
[学] Choeropsis liberiensis
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目カバ科の動物。近似種のカバHippopotamus amphibiusに比べて原始的な形態をもち、生息地からリベリアカバともよばれる。西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニアの森林地帯、湿気の多い水辺に生息する。頭胴長1.5~1.8メートル、肩高0.75~1メートル、尾長15センチメートル、体重180~250キログラムで、カバの10分の1に満たない。形態的にもカバとは差があり、目と鼻が顔面から突出せず、指間に水かきがない。また、前後肢は細くて比較的長く、背は丸い。体色は体上面が紫がかった褐色、下面が淡色で、体毛は尾端を除き極端に少ない。歯式は
で計38本である。
カバと異なり群れをつくらず、単独または一つがいで生活し、外形に似ず性質は臆病(おくびょう)で、危険があると森の中に姿を隠す。おもに夕方から夜にかけて行動し、日中は茂みなどで休息していることが多い。食性は草食で、木の芽、草、果実などを主食とする。妊娠期間はおよそ7か月で、1産1子である。寿命はカバより短く20~40年といわれる。日本では東京の上野動物園、名古屋市東山動植物園、和歌山県のアドベンチャーワールドで飼育されており、上野動物園に最初の繁殖例がある。
[中川志郎]