コビトドリ(英語表記)tody

翻訳|tody

改訂新版 世界大百科事典 「コビトドリ」の意味・わかりやすい解説

コビトドリ (小人鳥)
tody

ブッポウソウ目コビトドリ科Todidaeの鳥の総称。西インド諸島特産の非常に小型の鳥で,1属5種からなる。全長約10cm。羽色と形態は5種ともよく似ている。上面は緑色,のどは赤く,下尾筒は黄色,胸腹部白色ないし淡黄色や淡緑色の部分があり,わき桃色。脚は黒くて短い。雌雄は同色。くちばしは扁平でやや長く,上くちばしは黒く,下くちばしの大部分は赤い。主として山地の開けた森林に生息し,地上近くや低木層で生活している。群れにはならず,1羽かつがいでくらしている。一般に人をほとんど避けない鳥だが,その鳴声はよく聞かれても,上面が緑色の小さな鳥で,あまり飛び回らないので見つけにくい。くちばしを斜め上方約45度に保つ特異な姿勢で静かに小枝に止まり,近くに昆虫が飛来すると飛び立って空中でとらえる。また,枝上を静かに動いてトカゲなどを採食する。やわらかい土手に直径約3cmのトンネル状の横穴を掘り,その奥に1腹2~4個の白色の卵を産む。巣づくり,抱卵,育雛(いくすう)は雌雄とも行う。しかし,詳しく研究された種はなく,抱卵日数などはわかっていない。キューバコビトドリTodus multicolorはキューバとパインズ島に,ジャマイカコビトドリT.todusはジャマイカとプエルトリコに,プエルトリココビトドリT.mexicanusはプエルトリコに,ハシブトコビトドリT.subulatusハイチとゴナーブ島に,ハシボソコビトドリT.angustirostrisはハイチに分布している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コビトドリ」の意味・わかりやすい解説

コビトドリ
Todidae; todies

ブッポウソウ目コビトドリ科の鳥の総称。全長 10~12cm,体重 5~7g。5種からなり,すべてカリブ海大アンティル諸島に分布している。どの種もは体のわりにやや長く,形は平たくて縁が鋸状になっている。色は上下で異なり,上嘴は黒,下嘴は赤である。頭上から背,上面,尾は明るい緑色,喉は赤色,脇は桃色である。胸から腹は白っぽく,種によっては腹部や上胸部はかなり黄色みが強い。平地から高地の森林に生息する。昆虫やクモなどを主食とし,果実もわずかに食べる。枝に留まり,葉などにいる獲物を見つけると飛び立って捕まえ,別の枝に留まって食べる。林縁や川岸,あるいは林の中の土手に 30~60cmの横穴を掘って営巣する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コビトドリ」の意味・わかりやすい解説

コビトドリ
こびとどり / 小人鳥
tody

鳥綱ブッポウソウ目コビトドリ科に属する鳥の総称。この科Todidaeにはコビトドリ属Todusがあるだけで、5種がある。大アンティル諸島にのみ分布し、キューバ、ジャマイカ、プエルト・リコの各島に1種ずつ、イスパニョーラ島には2種がすんでいる。どの種もよく似ているが、イスパニョーラ島にいる2種のうちの1種は、山地の森林にすみ、他のコビトドリ類に比べると嘴(くちばし)がやや細いのが特徴である。コビトドリ類は全長9~10センチメートル、嘴はまっすぐですこし長い。体の上面は緑色で、下面は白色、胸側がバラ色や黄色をして、のどは赤い。鳴き声は種ごとにそれぞれ特徴があり、普通、低地の森林にすむ。枝から飛び立ち空中で昆虫をとらえるが、飛ぶときに、外側の初列風切(かざきり)によって特別の音を出す。巣は、土手に穴を掘ってつくり、白色の卵を産む。

[高野伸二]

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