改訂新版 世界大百科事典 「コルキカム」の意味・わかりやすい解説
コルキカム
colchicum
Colchicum autumnale L.
ユリ科コルキカム属の秋植球根植物。別名イヌサフランと呼ばれ,土や水がなくても机の上で花が咲く珍しい,おもしろい性質がある。球根はタマネギ大の大きさで茶褐色の外皮をかぶり,底部に脚と呼ばれる突起がある。9月下旬から10月に藤桃色のクロッカスを大きくしたような美花が次々と咲く。翌春オモトのような葉を根生,草丈20~30cmぐらいまで伸び,6月上旬には枯れて休眠する。
コルキカム属Colchicum(英名autumn crocus/meadow saffron)はヨーロッパから北アフリカ,ペルシアにかけて約60種が分布している。多くはイヌサフランのように秋咲きの美しい花をつけ,栽植されているが,また種間交配も行われ,ザ・ジャイアントThe Giant,ウォーターリリーWaterlilyなどのみごとな品種が育成されている。
植込みは8月から9月上旬。よい花を咲かせるには日当りのよい所を選ぶ。1球から10輪もの花が2~3週間も咲きつづけ,色彩も一段と濃く秋の庭園にさえる。耐寒性でなん年も植えたままでもよく開花する。また机の上で咲かせたものは,花が終わったら植え付けてやるとよい。コルキカムはコルヒチンという有毒成分を含み,かつては痛風などの鎮静剤に利用されたこともあるが,この成分は細胞分裂の際に染色体を倍加させる作用があり,植物の育種に広く利用されている。
執筆者:水野 嘉孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報