日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーンズバラ」の意味・わかりやすい解説
ゲーンズバラ
げーんずばら
Thomas Gainsborough
(1727―1788)
イギリスの画家。サドベリーに生まれ、15歳のときロンドンに出て画(え)を習い、1748年故郷に帰った。サフォークで職業として肖像画を描いて生計をたて、その合間に好きな風景画を描き、バイオリンを弾いて楽しんだ。59年バースに移住し、注目された。やがてロンドンに出、肖像画家としてJ・レノルズと並び称されることになる。風景画も名声は得たが売れなかった。ロイヤル・アカデミーの設立委員となり、創立とともに会員となった。肖像画はファン・ダイクに基づく流麗な作品もあるが、かなり多くは人物と風景とをいっしょに描き、人物と風景とが溶け込んだ田園生活の魅力を示している。それが風景画そのものになると、空は曇り、情景は荒涼として、北欧的な暗さと哀愁が感じられる。孤独な情感、光と色の処理は、当時流行のイタリア風を脱却し、国土的、国民的な感情をもつ。イギリス風景画の創始者、樹立者である。
[岡本謙次郎]