第2次大戦以後,多くの国家がGNP(国民総生産)の増大を国家目標として掲げてきた。その結果,資源やエネルギーを大量に消費して経済成長をなしとげたが,国民生活におけるゆとりや快適さを犠牲にし,自然環境を破壊することになり,放置できない状況になってきた。これらの問題を克服するためには,GNPの増大よりも,国民が日常の生活のなかで満足感・充足感をもって暮らせること,またその達成を保障する社会的条件をつくることを重視する方向へ,価値観の転換が求められてきた。このように〈より多く〉よりも〈より良く〉という価値観として,世界的には1965年ころからクオリティ・オブ・ライフ(QOLと略称)という言葉が使われはじめ,日本でも70年から経済企画庁が社会指標として〈生活の質〉の指標化にとりくんでいる。72年ローマ・クラブ報告書《成長の限界》の中で使われて以来,広く使われるようになった。生活の質を個人の意識の問題として満足感・充足感として定義する見解,個人生活をとりかこむ社会的環境の問題として暮しやすさとして定義する見解,その両者を統合する見解があり,社会指標として使われる場合は第3の見解がとられている。経済企画庁が作成している社会指標は,健康,教育・学習・文化,雇用と勤労生活の質,余暇,所得・消費,物的環境,個人の安全と法の執行,家族,コミュニティ生活の質,階層と社会移動の10の社会目標分野を指数化して,生活の質の量的測定を行っている。
執筆者:田中 恒子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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