日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴドーを待ちながら」の意味・わかりやすい解説
ゴドーを待ちながら
ごどーをまちながら
En attendant Godot
フランスの劇作家、S・ベケットの戯曲。1952年フランス語で発表。初演は翌年パリ。著者による英訳版(1954)には「二幕の悲喜劇」と副題がついている。木が1本生えているだけの田舎(いなか)道で、2人の浮浪者が、待ち合わせの約束をした(と彼らは信じている)ゴドーを待つが、待ち人はこず、かわりに主人(ポッツォ)と召使い(ラッキー)の2人連れが通りかかる。そのあと少年が現れ、ゴドーさんは今日はこられないが明日はきっとくると伝言し、第1幕が終わる。第2幕も似たような展開をみせる。伝統的作劇法を完全に無視して、サーカスや寄席(よせ)の道化(どうけ)芝居に近い体裁のもとに、何かを待ち続ける現代の人間の条件をみごとにとらえた作品。初演時には反発や困惑の嵐(あらし)を巻き起こしたが、その後「不条理演劇」の元祖としてのみならず、現代演劇全体を革新した記念碑的傑作として、いまもその謎(なぞ)めいた魅力は衰えていない。
[高橋康也]
『『ベケット戯曲全集Ⅰ』(1967・白水社)』