日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペガソス」の意味・わかりやすい解説
ペガソス
ぺがそす
Pegasos
ギリシア神話の翼をもつ神馬。ヘシオドスは、世界の西の果てオケアノス(大洋)のペガイ(水源)で生まれたためにこの名がつけられたと説明しているが、これはギリシア人が先住民族から受け継いだ名称と考えられている。ポセイドンの胤(たね)を宿していたメドゥサがペルセウスに首をはねられたとき、その切り口からペガソスとクリサオルが生まれ出た。ペガソスは人間の手になる馬銜(はみ)をかませられることはなかったが、泉で水を飲んでいるとき、アテネの神助を得たベレロフォンに捕らえられてその乗馬となった。そして、口から火を吐く山羊(やぎ)の怪獣キマイラや、勇猛なソリモイ人、女戦士アマゾンと戦うベレロフォンを助けた。しかし、ベレロフォンがペガソスを駆って天のゼウスの宮にまで昇ろうとしたとき、ペガソスは傲(おご)れる騎手ベレロフォンを振り落とし、ゼウスのために雷電を運ぶ役目についたとされる。
ペガソスが蹄(ひづめ)で打った所にヒッポクレネ(馬の井)という泉が湧(わ)き出たという伝説は、ムーサイ(詩の女神たち)の住むヘリコン山をはじめ、ギリシア各地に伝わっていた。ローマ時代にはこの天馬は不死のシンボルとされ、今日ペガスス座にその名を残している。
[中務哲郎]