アメリカの労働運動指導者。ロンドンのイースト・エンドで貧しいユダヤ人労働者の家庭に生まれ,1863年家族とともにアメリカに移住し,ニューヨークで葉巻工となる。葉巻工組合の指導者(1874-81)をへて,86年に正式に発足したアメリカ労働総同盟(AFL)の会長に就任し,没年まで在任。AFLの形成・発展に尽くし,“アメリカ労働運動の父”ともいうべき人である。AFLの運動路線はゴンパーシズムGompersismと呼ばれるほどで,彼が果たした役割は大きい。ゴンパーシズムの特徴は,労働者の経済的地位の向上は,社会主義,共産主義,無政府主義によってではなく,労働組合主義(トレード・ユニオニズム)によってのみ達成される,とする点にある。その後1930年代ならびに60年代に,急進主義からの挑戦を受けたが,ゴンパーシズムは,なお基本的に現代のアメリカ労働運動に受け継がれている。
→AFL-CIO
執筆者:萩原 進
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アメリカの労働運動指導者。オランダ系ユダヤ人の子としてロンドンの貧民街に生まれ、1863年に一家で移民した。葉巻作りの労働者となり、その組合に参加して社会主義思想に触れたが、資本主義体制内で労働者の経済的地位改善という考えに傾いていった。81年より全国的な組合連合体結成に努め、5年後AFL(アメリカ労働総同盟)を発足させ、その会長職を1年を除き死ぬまで務めた。彼の立場は、熟練工中心の職能別組合を推進し、団体交渉によって経営者から条件改善を獲得する一方、政府の介入を避け、無党派主義で既成政党内の親労働者勢力に頼ろうとし、左翼政党を拒否する「任意主義」の「純粋かつ単純」な「ビジネス組合主義」であった。これは、CIO(産業別組合会議)の成立までアメリカ労働運動の代表的な考え方であり、相当な成果をあげたものの、連合体内の加盟組合自治尊重から、人種差別や組合内腐敗を黙認するものでもあった。
[長沼秀世]
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1850~1924
アメリカの労働運動指導者。イギリス出身。1863年渡米,労働運動で活躍し,86年アメリカ労働総同盟(AFL)を結成,生涯会長を務める。熟練労働者を構成員とする職能別組合と労資協調主義の立場に立ち,経済闘争を重視した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…ナイツの勢力は,1880年代後半に衰退し,20世紀に入るとAFLは,組織人員の急増を背景に,アメリカ労働運動の主導権を掌握した。86年以来,葉巻工組合出身のユダヤ人S.ゴンパーズがAFLの会長となり,ゴンパーシズムと呼ばれる穏健な職業別組合主義(ビジネス・ユニオニズム)の線に沿って,AFLは大きく発展した。組織人員でみると,1900年に54万8000人であったのが,14年には202万人へと急増したのである。…
※「ゴンパーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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