ゴンパーズ(読み)ごんぱーず(英語表記)Samuel Gompers

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴンパーズ」の意味・わかりやすい解説

ゴンパーズ
ごんぱーず
Samuel Gompers
(1850―1924)

アメリカの労働運動指導者。オランダ系ユダヤ人の子としてロンドン貧民街に生まれ、1863年に一家で移民した。葉巻作りの労働者となり、その組合に参加して社会主義思想に触れたが、資本主義体制内で労働者の経済的地位改善という考えに傾いていった。81年より全国的な組合連合体結成に努め、5年後AFL(アメリカ労働総同盟)を発足させ、その会長職を1年を除き死ぬまで務めた。彼の立場は、熟練工中心の職能別組合を推進し、団体交渉によって経営者から条件改善を獲得する一方、政府の介入を避け、無党派主義で既成政党内の親労働者勢力に頼ろうとし、左翼政党を拒否する「任意主義」の「純粋かつ単純」な「ビジネス組合主義」であった。これは、CIO(産業別組合会議)の成立までアメリカ労働運動の代表的な考え方であり、相当な成果をあげたものの、連合体内の加盟組合自治尊重から、人種差別や組合内腐敗を黙認するものでもあった。

[長沼秀世]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴンパーズ」の意味・わかりやすい解説

ゴンパーズ
Gompers, Samuel

[生]1850.1.27. ロンドン
[没]1924.12.13. テキサス,サンアントニオ
アメリカの労働運動指導者。 1863年イギリスからニューヨークに渡り,家業のたばこ商に従事。 77年たばこ製造労働者組合の再結成に参加。 81年労働組合同盟 FOTLUの組織委員長。 86年アメリカ労働総同盟 AFLの組織化に際し初代議長となり,86~1924年 (1895年を除く) 在任。第1次世界大戦にアメリカが参戦した 17年に T.W.ウィルソン大統領により国防会議の委員に任命され,19年にはパリ講和会議の国際労働法制委員会に参加した。思想的には保守派に属し,労働者のエネルギーが経済問題以外に向うことを恐れた。労働組合とはラディカリズムに対する防壁であるという考えをもち,戦争には積極的に協力した。

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