国境を越えたコンピュータ犯罪やサイバー攻撃に対応する国際条約。日本語での正式名称は「サイバー犯罪に関する条約」で、ハンガリーのブダペストで各国代表が署名したことから「ブダペスト条約」ともよばれる。ヨーロッパ評議会が起草し、2001年11月に30か国が署名・採択、2004年7月に発効した。2013年9月時点で51か国が条約に署名し、40か国が批准している。日本は2004年(平成16)に批准し、2011年にコンピュータ・ウイルス作成罪などを盛り込んだ改正刑法・刑事訴訟法(「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」、平成23年法律第74号)が成立して国内法を整えた後、2012年11月に正式加盟した。ヨーロッパ諸国のほか、日本、アメリカ、オーストラリア、カナダが加盟しているが、ロシア、中国は加盟していない。また、アジアで加盟しているのは日本のみである。
条約には、コンピュータ犯罪やサイバーテロに対する国際協力体制を築き、国外への持ち出しが容易なコンピュータ記録(データ)の保存・押収をしやすくするねらいがある。また、ネットワークを利用した不正行為を国内法で犯罪と位置づけ、各国が協力してコンピュータ記録の保存・提供が行えるよう、加盟国に国内法の整備を義務づけている。条約は全48か条からなり、(1)違法アクセス、オンライン詐欺、コンピュータ・ウイルスによるデータの破損やシステム機能妨害、児童ポルノ配信、著作権侵害などのサイバー犯罪の類型を定義した刑事実体法部分、(2)データの保全、捜索、押収、通信傍受などの手法を定めた手続法部分、(3)国際的な捜査の相互協力、犯罪人引き渡し、裁判権などを定めた条約部分、などで構成されている。
この条約は電子媒体上の犯罪を取り締まる世界初の包括条約として評価される半面、国家権力が行うようなサイバーテロに対しては不十分ともいわれる。また、同条約への主要国の加盟が進み、主要国の警察などの捜査機関が強大な権限をもつことで、公権力によるプライバシー侵害などがおこることを懸念する声もある。
[編集部]
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