デジタル大辞泉
「さしゃる」の意味・読み・例文・類語
さしゃる[助動]
[助動][さしゃら(さしゃろ)|さしゃり(さしゃっ)|さしゃる|さしゃる|さしゃれ|さしゃれ(さしゃい)]《尊敬の助動詞「さす」の未然形に尊敬の助動詞「らる」が付いた「させらる」の音変化》上一段・上二段・下一段・下二段・カ変動詞および一部の助動詞の未然形に付く。尊敬の意を表す。…なさる。→さっしゃる →しゃる
「風ひかぬやうにして寝さしゃれませい」〈浮・一代女・五〉
[補説]活用は、もと下二段型(未然形・連用形「さしゃれ」)であったが、のち四段型となる。多く近世上方の歌舞伎・浄瑠璃などに用いられた。
さしゃ・る[動]
[動ラ特活]《サ変動詞「す」の未然形「せ」に尊敬の助動詞「さしゃる」の付いた「せさしゃる」の音変化か》「する」の意の尊敬語。なさる。せられる。
「隙じゃさかいに夜番―・りますか」〈浮・一代女・二〉
[補説]活用は下二段型「れ・れ・る・るる・るれ・れよ(れい)」と、四段型「ら・り・る・る・れ・れ」の混合型である。
さしゃ・る[動]
[動ラ特活]《動詞「さす」の連用形「させ」に助動詞「やる」が付いた「させやる」の音変化》「させる」の意で、対等、またはそれに近い下位のものからさせられるときにいう。
「あのやうなる病者ををこして、迷惑を―・る事じゃ」〈狂言記・緡縄〉
[補説]活用は助動詞「やる」に同じ。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
さしゃる
〘助動〙 (「させらる(る)」の変化した語) 動作の
主体(受身の場合は動作を受ける主体)に対する尊敬の意を表わす語。お…なさる。
①
上方語。一・二段活用型の活用語の未然形に付く。→
補注(2)。
※狂言記・二千石(1660)「御一門の
参会にも。しゃうざをつめさしゃれまする」
②
江戸語。上一・下一段活用型の活用語の未然形、カ変の連用形に付く。普通「さっしゃる」の形で用いられることが多い。
※
洒落本・郭中奇譚(1769)掃臭夜話「
今夜はお月様がよくさへさしゃった」
[補注](1)近世初期、上方に発生した語。
後期には江戸でも使用されたが、「さっしゃる」の形の方が普通である。
(2)サ変動詞に接続する時は、「せさしゃる」とはならず、「さしゃる」の形で用いる。また、上方語では、まれに、四段活用の未然形に接続していると見られる例がある。「かうとうさまのまいらさしゃれまするならまいりませう」〔狂言記・
丼礑〕など。
さしゃ・る
〘他ラ特活〙 (活用は助動詞「
さしゃる」に同じ。助動詞「さしゃる」がサ変動詞に接続した「せさしゃる」の意に用いた語。ただし、「せさしゃる」の例は見られない) 「する」の意の尊敬語。なさる。せられる。近世上方の語で、江戸では「さっしゃる」が用いられた。
※狂言記・緡縄(1660)「なんと、さしゃれましたぞ」
※盤珪仏智弘済禅師御示聞書(1688‐1704頃)上「是をよく
決定さへさしゃるれば」
さしゃ・る
〘他ラ特活〙 (活用は助動詞「
やる」に同じ。動詞「さす(る)」の連用形「させ」に、助動詞「やる」が接続した「させやる」の変化した語) 「させる」の意で、対等または対等に近い下位のものからさせられるときにいう。
※狂言記・緡縄(1660)「あのやうな
病者(やまひもの)ををこして。迷惑をさしゃる事じゃ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報