しゃる(読み)シャル

デジタル大辞泉 「しゃる」の意味・読み・例文・類語

しゃる[助動]

[助動]《尊敬の助動詞「せ」に尊敬の助動詞「らる」の付いた「せらる」の音変化。近世語》四段・ナ変動詞の未然形に付いて、尊敬の意を表す。なさる。→さしゃる
「かか様の死なしゃれぬ様にして下され」〈浄・阿波鳴渡
[補説]もと下二段型活用「しゃれ・しゃれ・○・○・しゃるれ・○」で、のちに四段型活用「しゃら・しゃり(しゃっ)・しゃる・しゃる・しゃれ・しゃい(しゃれ)」となる。「きさまの着物も、薄綿になっては夫限それぎりだと思はっしゃい」〈滑・浮世風呂・前〉のように上接する動詞語尾との間に促音が加わり、「っしゃる」となることもある。

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精選版 日本国語大辞典 「しゃる」の意味・読み・例文・類語

しゃる

  1. 〘 助動詞 〙 ( 活用は→語誌( 2 )( 3 )( 4 )( 5 )。四段活用動詞の未然形に付く。→語誌( 6 )。尊敬の助動詞「す」の未然形に尊敬の助動詞「らる」の付いた「せらる」の変化した語 ) 動作の主体(受身の場合は動作を受ける主体)に対する尊敬の意を表わす。お…なさる。→語誌( 1 )
    1. [初出の実例]「かみかしもかへまわらしゃれませい」(出典:狂言記・皸(1660))
    2. 「ソレおれを頼ましった事を、忘れはさっしゃるまいが」(出典:歌舞伎・傾城金秤目(1792)一番目)

しゃるの語誌

( 1 )近世初期上方に発生し、後期には江戸でも用いられた。助動詞「ます」を付けて尊敬する人の動作に用いると、高い敬意を表わす。「京へ御養生に上らしゃりましたと聞きました」〔歌舞伎・好色伝受‐上〕など。
( 2 )活用は上方と江戸とでは異なるところがある。( イ )前期上方では四段型活用(しゃら、しゃり・しゃっ、しゃる、しゃる、しゃれ、しゃれ・しゃれい)と、下二段活用(しゃれ、しゃれ、〇、〇、しゃるれ、〇)の型が並び行なわれた。( ロ )後期上方と江戸とでは、四段型活用(しゃら、しゃり・しゃっ、しゃる、しゃる、しゃれ、しゃれ・しゃい)が行なわれた。ただし、江戸語では連用形に「しっ」の形も行なわれ、「しゃっ」よりも普通に用いられた。
( 3 )禁止の助詞「な」を付けた「しゃるな」は、「しゃんな」ともなる。「あんまり欲しがらしゃんな」〔歌舞伎・日本月蓋長者‐二〕など。
( 4 )江戸語で、命令形「しゃい」から変化した「せえ」「せ」「し」があるが、敬意は薄れており、別語とした。
( 5 )助動詞「ます」の付いた「しゃります」「しゃれます」は「しゃます」となることがある。→しゃます
( 6 )接続する動詞と「しゃる」との間に促音が加わることがある。「扨ては殿の上意で殺さっしゃるか」〔歌舞伎・水木辰之助餞振舞‐二〕など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「しゃる」の意味・わかりやすい解説

シャル
しゃる
Clifford G. Shull
(1915―2001)

アメリカの実験物理学者ピッツバーグ生まれ。1933年にカーネギー工科大学(現、カーネギー・メロン大学)に入学し、物理学への興味をかきたてられる。1937年に卒業して、ニューヨーク大学の大学院進学。ここで原子核物理学の研究者たちと出会い、1941年に博士号を取得。民間会社の研究所を経て、1946年から1955年までクリントン研究所(現、オークリッジ国立研究所)に在籍し、物質を構成する原子などの粒子の並び方を調べる中性子散乱についての研究を行う。X線を使って物質の微細な構造を調べる従来の方法では、原子の表面を覆う電子の分布の観測はできても、その内部にある原子核の観察はむずかしかった。中性子を使うと、電子の影響を受けずに原子核を調べることができる。この手法は、現在では高温超伝導体やウイルスなどの構造を調べるために広く応用されている。1955年にマサチューセッツ工科大学(MIT)に移り、退職する1986年まで教授を務めた。中性子散乱の手法、とくに物質中の原子の配列を決めるのに有効な中性子回折の技法を開発した業績に対し、同じ中性子散乱で原子の振動状態などを観察する手法を開発したB・ブロックハウスとともに、1994年のノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「しゃる」の意味・わかりやすい解説

シャル
Shull, Clifford G.

[生]1915.9.23. ペンシルバニア,ピッツバーグ
[没]2001.3.31. マサチューセッツ,メドフォード
アメリカ合衆国の物理学者。フルネーム Clifford Glenwood Shull。1937年カーネギー工科大学を卒業,1941年ニューヨーク大学で博士号を取得。民間企業での研究生活を経て,1946~55年オークリッジ国立研究所の物理学主任を,1955~86年マサチューセッツ工科大学 MIT教授を務めた。オークリッジ国立研究所で,単一速度の中性子線(→中性子)を物質内に透過させ,回折散乱する中性子を測定して物質の原子構造を調べる中性子散乱の技術を確立した(→回折法)。1994年,シャルとは異なる方法で中性子散乱の分光法を開発したカナダの物理学者バートラム・N.ブロックハウスとともにノーベル物理学賞を受賞した。

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百科事典マイペディア 「しゃる」の意味・わかりやすい解説

シャル

米国の物理学者。ニューヨーク大で物理学博士号を取得後,オーク・リッジ国立研究所で中性子ビーム装置の開発に従事。マサチューセッツ工科大学教授。1994年中性子散乱技術の開発の業績によりB.N.ブロックハウスとともにノーベル物理学賞。

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