サッケッティ(読み)さっけってぃ(英語表記)Franco Sacchetti

デジタル大辞泉 「サッケッティ」の意味・読み・例文・類語

サッケッティ(Franco Sacchetti)

[1330ころ~1400ころ]イタリアの詩人・小説家。貴族の出身で、フィレンツェ市政に参与。短編集「三百話」で当時の社会を描いた。

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精選版 日本国語大辞典 「サッケッティ」の意味・読み・例文・類語

サッケッティ

  1. ( Franco Sacchetti フランコ━ ) 一四世紀のイタリアの詩人、小説家。フィレンツェの生まれ。作品に恋愛詩のほか歌謡短編小説など。生没年未詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サッケッティ」の意味・わかりやすい解説

サッケッティ
さっけってぃ
Franco Sacchetti
(1332ころ―1400)

イタリアの詩人、小説家。フィレンツェ自由市の名門商家に生まれ、若いころから商用でイタリア各地を歩いたが、帰国後は市政府の要職につく。1378年、貧民たちによるチョンピの革命が起こり、小市民政権が樹立されたものの、2~3年で崩壊。晩年には北イタリア諸都市の行政官として招かれたりした。

 サッケッティは青年時代から詩作を好み、ソネットカンツォーネをつくったが、マドリガルバラードのほうがむしろ得意であった。代表作は『短編小説(ノベッラ)300編』(邦訳『ルネッサンス巷談集』)で、著者自らボッカチオの「不肖魯鈍(ろどん)な弟子」と自任しているからには、この小説は『デカメロン』に倣ったものとみてよい。事実、「素材としては、あのボッカチオ的世界と同じだが、よりブルジョア的、家庭的側面が強められている。警句、冗談、艶話(えんわ)、生臭坊主譚(たん)、逸話、世間話が飛び出してくる。庶民的な形式で書かれた庶民的な、低俗な生活である」と、デ・サンクティスは批評している。しかし、傭兵(ようへい)隊長僭主(せんしゅ)、道化師、市民、ダンテジョットが登場してくる話を読むと、市井の生活のほこりっぽさや喜怒哀楽を活写するなかにも、フィレンツェ人独得の才気や意地悪さをサッケッティが欠いていないことがわかる。ダンテ、ボッカチオ、ペトラルカ亡きあと、1300年代最後の作家であった。

[花野秀男]

『杉浦明平訳『ルネッサンス巷談集』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「サッケッティ」の意味・わかりやすい解説

サッケッティ
Franco Sacchetti
生没年:1330ころ-1400

イタリアの短編小説家,詩人。フィレンツェの商家に生まれ,商人としてイタリア各地を歩いたが,中年以後市政府の要職に就き,各地の司政官を務めた。彼の代表作《小説三百編》(邦訳《ルネッサンス巷談集》)は,死の直前1399年ごろ完成したが,作者の没後170年を経て発見され,18世紀になってやっと出版された。そのころには300編のうち,ほぼ完全な作品は215編しか残っていなかった。この作品は《デカメロン》にならった短編小説集だが,《デカメロン》よりはるかに短く,その材料は当時の王侯,名士の逸話や伝説だけでなく,名もない市井人のしくじりや道化師のインチキ,ペテン,駄馬やラバが広場であばれだして市中を大混乱に陥れるいきさつが活写され,愉快なエロ話も欠けていない。ほこりっぽくて猥雑なルネサンスの庶民生活をこのくらい鮮やかに活写している文学は他にない。ブルクハルトの《イタリア・ルネサンスの文化》はこの小説集なくしては,あれほどゆたかな成果を挙げえなかっただろう。ルネサンス社会の万華鏡といわれるのもゆえなしとしない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サッケッティ」の意味・わかりやすい解説

サッケッティ
Sacchetti, Giovanni Battista

[生]1700. トリノ
[没]1764. マドリード
イタリア・バロックの建築家。マドリード王宮の設計者。 1735年,スペイン王フェリペ5世とそのイタリア人の王妃イサベル・ファルネセはベルサイユ宮殿をしのぐ大宮殿の建設を計画,イタリアの建築家 F.ユバラに委託したが,巨大な宮殿案を作成したまま,同年没。後継者として,弟子のサッケッティを推薦,彼はユバラ案を変更して,面積も4分の1に縮小し,38~64年に建造した。長さ 120m,奥行 125mの花崗岩を用いた大宮殿で,高い基壇をもち,マドリード中心部の高所に威容を示している。

サッケッティ
Sacchetti, Franco

[生]1330. ラグーサ
[没]1400. サンミニアート
イタリアの詩人,物語作家。フィレンツェの教皇派貴族の家に生れ,商人として各地を旅行した。晩年には行政官となりトスカナ地方の都市国家の要職にもついた。軽妙な作品のなかにみずからの政治的信条が盛込まれている。いくつかの詩は自身の作曲により,広く知られた。主著は,彼の豊かな人生経験をもとに当時の市民生活を活写した『三百小話集』 Trecento novelle (1395) であるが,散逸して,現存するのは 223編。

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世界大百科事典(旧版)内のサッケッティの言及

【ノベラ】より

…デカメロンの成功は多くの類似作品を生み出した。フィレンツェのセル・ジョバンニが1383年以降執筆した《イル・ペコローネ》(シェークスピアの《ベニスの商人》で有名な人肉裁判の話を含む50話)やサッケッティの《トレチェント・ノベレ》(邦訳《ルネッサンス巷談集》),ルッカのセルカンビの《ノベレ》(15世紀初頭),さらにミラノのバンデロの《ノベレ》などがある。文学的には必ずしもすべてが優れたものではなく,退屈なものも多い。…

※「サッケッティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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