サトウチョウ(その他表記)hanging parrot

改訂新版 世界大百科事典 「サトウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サトウチョウ (砂糖鳥)
hanging parrot

オウム目オウム科サトウチョウ属Loriculusの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。全長10~15cm。上くちばしが長く,尾の短い小型のインコ。羽色は全体緑色で,頭頂部,胸,肩,腰などに赤色や黄色の羽毛がある。雌は雄に似ているが,頭頂部や胸の赤色斑を欠くものが多い。疎林,林縁,樹木の多い庭園などに群れをつくってすみ,甘味の多い果実を好んで食べるため,ときには果樹園に大きな被害を与える。果実は長い上くちばしの中にくわえ込み,下くちばしと舌を使ってじょうずに裂いて食べる。

 繁殖期には,他のオウム・インコ類のように,巣穴の底に直接産卵せず,樹洞の中に巣材を運び込んで丸天井のある巣をつくって産卵する。巣材を運ぶ習性が変わっていて,くちばしでくわえず,ボタンインコ類の雌のように,雌雄樹皮枯草などの植物繊維をくちばしで細長くかみ切り,胸,のど,背中の羽毛の間にはさんで巣へ運ぶ。ボタンインコ類とサトウチョウ類の羽毛には特殊な細かい鉤(かぎ)があり,羽毛の間にはさまれた巣材が落ちないようになっている。

 サトウチョウ類のもう一つの変わった習性は,英名が示すように,休息したり,夜寝るときに,木の枝に逆さにぶら下がることである。このときの姿勢は,コウモリのように垂直にぶら下がるのではなく,頭を下にして尾羽で枝をおさえてぶら下がる。この姿勢のまま,体の向きを変えたり,羽毛を整えたり,あるいは鳴いたりする。また,糞をするときには,体を揺すり,枝と体が45度の角度になったときに勢いよく排出する。インド南部およびスリランカからビズマーク諸島にかけて10種が分布し,変わった習性と愛らしさから飼鳥として珍重される。

 サトウチョウL.galgulus(英名blue-crowned hanging parrot)は全長約13cm。マレー半島,スマトラ,ボルネオなどに分布する。羽色は全体に鮮やかな緑色をしていて,くちばしが黒く,腰が赤い。雄はのどが赤く,頭頂に青い小斑と後頸(こうけい)に黄色の大きな斑がある。雌は胸の赤色斑がなく,全体ににぶい色をしている。マレーミドリサトウチョウL.vernalisは全長約14cm。インドからインドシナ半島にかけて分布する。全体に緑色をしていて,くちばしと腰が赤く,雄ののどは青みを帯びている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サトウチョウ
さとうちょう / 砂糖鳥
hanging parrakeet

鳥綱オウム目オウム科サトウチョウ属に含まれる鳥の総称。この属Loriculusの仲間は熱帯アジア産で、全長約10~15.5センチメートル、もっとも小さい短尾のインコ類で、約8種30亜種がある。アフリカ産のボタンインコ類に似るが、花蜜(かみつ)・果実食で、それに適応して嘴(くちばし)が小さいが上嘴は長く、枝に逆さにぶら下がる習性が特徴で、その姿勢で眠る。代表種のサトウチョウL. galgulusは草緑色で、雄は頭頂に青色の円斑(えんはん)、胸に大きな赤斑があり、腰は黄色と赤色、嘴は黒色である。雌は胸の赤色がなく、全体に淡色をしている。果実食なので、飼養には軟餌(なんじ)(小麦粉に牛乳や砂糖を加えた粥(かゆ)、蜂蜜(はちみつ)入りの牛乳に浸(つ)けたパンなど)や時節の果実を必要とし、それらが腐敗しないように適温に保たなければならない。本種はマレーシア、インドネシア(ジャワ、バリ両島を除く)に広く分布し、森縁から耕地、ゴム園、庭などにみられ、多数が愛玩(あいがん)用に飼われている。日本には江戸時代から輸入された。ジャワ、バリ両島にはヒマラヤ・インド・マレー系のミドリサトウチョウL. vernalisの亜種キムネサトウチョウがおり、フィリピンには嘴や頭が赤いシュバシサトウチョウL. philippensisがすむ。

[黒田長久]

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世界大百科事典(旧版)内のサトウチョウの言及

【インコ(鸚哥)】より

…オウム科約320種の大部分を占め,羽色が美しく,ものまねがじょうずな種が多く,古くから飼鳥としても親しまれている。 大半の種はヒインコ(セイガイインコ)亜科とインコ亜科に属し,ヒインコ亜科はヒメインコ類とセイガイインコ(ハケシタインコ)類に,インコ亜科はヒラオインコ類,ロウバシインコ類,サトウチョウ類,カクビインコ類,クサビオインコ類に分けられている。ヒメインコ類4種は,小型のずんぐりした体つきのインコで,ニューギニアとその周辺の島に分布する。…

※「サトウチョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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