サマルスキー石(読み)さまるすきーせき(英語表記)samarskite-(Y)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サマルスキー石」の意味・わかりやすい解説

サマルスキー石
さまるすきーせき
samarskite-(Y)

複酸化鉱物放射能鉱物の一つ。花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に産する。自形は短柱状で柱面、ときに庇(ひ)面がよく発達し、単斜晶系の特徴を示すことがある。通常はメタミクト状態で産する。メタミクト状態とは、鉱物自体のもつ放射能によって結晶質でなくなることをいう(加熱によって再結晶する)。鉄コルンブ石とよく共存するが、フェルグソン石とは共存しない。ロシア鉱山技術局長サマルスキー・ビホベッツVasilii Yefrafovich von Samarski-Bykhovets(1803―1870)にちなんで命名された。英名の-(Y)は、希土類元素を主成分とする鉱物において、原子数がもっとも多量に含まれているものの元素記号を、接尾語で示す規定による。元素記号が異なると、語幹の鉱物は同一でも別種の扱いを受ける。サマルスキー石は現在イットリウムが卓越したsamarskite-(Y)のみ知られている。

加藤 昭 2016年9月16日]


サマルスキー石(データノート)
さまるすきーせきでーたのーと

サマルスキー石
 英名    samarskite-(Y)
 化学式   (Y,Fe,U)(Nb,Ta)O4
 少量成分  Ca,ΣCe,Mn,U,Th,Pb,Ta,Ti,H2O
 結晶系   単斜
 硬度    5~6
 比重    5.2~5.8
 色     漆黒
 光沢    樹脂~亜金属
 条痕    黒~赤褐
 劈開    無
       (「劈開」の項目を参照

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サマルスキー石」の意味・わかりやすい解説

サマルスキー石
サマルスキーせき
samarskite

AB2O6 の一般式で表わされる鉱物。A=イットリウムエルビウムウラン,鉄 (II) ,トリウムなど,B=ニオブ,タンタル斜方晶系。通常ウラン,トリウムなどの放射能によって結晶格子の乱されたメタミクト状態で産する。柱状結晶として成長することが多いが,塊状で産出する場合も少くない。断口貝殻状,硬度5~6,比重5~6。割れ口ではガラスまたは亜金属光沢をもつ。黒色のペグマタイト鉱物で,世界各地に産出し,日本では福島県石川地方に石川石などと共生する。

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