日本大百科全書(ニッポニカ) 「石川石」の意味・わかりやすい解説
石川石
いしかわいし
ishikawaite
酸化鉱物の一つ。1923年(大正12)木村健二郎によって、福島県石川町から新鉱物として報告された鉱物。発表直後、サマルスキー石(化学式(Y,Fe,U)(Nb,Ta)O4)との関連性が不十分であるとの指摘がなされた。しかし、1986年(昭和61)杉谷嘉則(すぎたによしのり)(1939― )らによって、石川石は(U,Y,Fe)(Nb,Ta)O4で、U>Y,Feの関係をもつ独立種であるという見解が発表され、現在はこれが支持されている。この種の存在を否定するという提案が正式になされなかったこと、ロシアやカナダで類似の化学的特徴をもったものが発見されたことも幸いした。
花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に産するが、Fe2+(二価鉄)の存在が必要なので、生成に際しては、U4+(四価ウラン)の濃集のほかに還元環境の卓越という条件が要求される。また、1991年アメリカのユタ州ハニーカム・ヒルズHoneycomb Hills産の、高度に分化作用の進んだ流紋岩質マグマに由来する噴出ペグマタイト質マグマeruptive pegmatite magmaの固化物中にも発見され、ペグマタイトの成因を追究する手がかりとなっている。自形は柱面と底面とからなる正方に近い断面の斜方(直方)立体。福島県石川町とその付近に何か所か産地がある。命名は原産地にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]