サルトリイバラ(読み)さるとりいばら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルトリイバラ」の意味・わかりやすい解説

サルトリイバラ
さるとりいばら
[学] Smilax china L.

ユリ科(APG分類:サルトリイバラ科)の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。高さ2~3メートル。地下茎は質が硬く、屈曲して地中に横たわる。茎は緑色で硬く、まばらに刺(とげ)があり、節ごとに曲がる。葉は互生し、卵円形ないし楕円(だえん)形で長さ3~12センチメートル、全縁で3~5脈があり、質は厚く光沢がある。葉柄に沿着した托葉(たくよう)の先が1対の巻きひげとなり、他物に巻き付く。雌雄異株。4~5月、新葉とともに淡黄緑色の小花を開き、散形花序になって多数集まる。花被片(かひへん)は6枚で上半が反り返り、雄花には雄しべ6本、雌花には3室の子房がある。果実は球形、径7~9ミリメートルで10~11月に赤く熟す。日本全土の山野に普通に生え、朝鮮半島、中国、インドシナ、フィリピンなどに分布する。西日本ではカシワのかわりに葉で餅(もち)を包む。赤い果実のついた枝をいけ花に使う。名は「猿捕り茨(いばら)」で、茎の刺にサルがひっかかるとの意味である。変種のオキナワサルトリイバラは沖縄に分布し、葉が大形で刺が少なく、トキワサルトリイバラは小笠原(おがさわら)諸島にあり、葉が常緑である。

 近縁種のヒメカカラは葉が小形で長さ0.5~1.5センチメートルで、屋久(やく)島、奄美(あまみ)大島に分布し、変種のサルマメは葉がやや大きく、長さ2~4センチメートルあり、関東地方以西の本州および中国に分布し、いずれも果実は赤く熟する。サツマサンキライは九州南部、沖縄以南に分布し、茎に刺の多いヤマカシュウ(ヤマガシュウ)とマルバサンキライは本州から九州にかけての山地に生え、ともに果実は黒くなる。

[小林義雄 2018年11月19日]

薬用

日本では根茎を山帰来(さんきらい)と称し、利尿解熱解毒、浄血剤として、膀胱(ぼうこう)炎、梅毒、こしけ、腫(は)れ物などの治療に用いる。仙遺粮(せんいりょう)の読みの訛(なま)りであると思われ、中国では根茎を土茯苓(どぶくりょう)というのが普通である。土茯苓の原植物はナメラサンキライ(一般にはサンキライと称する)S. glabra Roxb.で、中国の中南部、台湾、ベトナム、ミャンマー(ビルマ)、インドに分布するが、サルトリイバラと違う点は刺がなく、葉は披針(ひしん)形、花は白色、果実は暗青色である。根茎の薬効はサルトリイバラと同じである。

[長沢元夫 2018年11月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「サルトリイバラ」の意味・わかりやすい解説

サルトリイバラ
Smilax china L.

山地の明るい林縁に多いユリ科のつる植物で,低木に絡まってやぶをつくる。茎には堅いとげがあり,茂ると山道の通行のじゃまとなることが多い。葉は円形または楕円形で,葉先は短く突出する。質は厚く,表面には光沢がある。全縁で左右に数本のはっきりした平行脈がある。葉柄には托葉があり,その先端は巻きひげに変化する。花は散形花序につき,4~5月に咲く。雄花と雌花があり,雌雄異株。果実は球形で秋に熟し,赤くて美しい。日本全土に自生し,朝鮮,中国西部,台湾に分布する。関西以西の地方では若葉を用いてあん餅を包む習慣があり,マンジュウシバなどと呼んでいる。また若葉はゆでて食用とされ,成葉は茶の代用として利用されることがある。根茎を干したものを薬用とし,肝炎,腸炎などに薬効があるといわれる。この薬効成分は多量のサポニンからなり,その一つは属名にちなんでスミラシンsmilacinと呼ばれている。また南アメリカ産のサルトリイバラ属の1種も薬効のあるサポニンを含み,サルサ根(こん)(英名sarsaparilla)と呼ばれ,利尿剤として利用される。

 サルトリイバラ属Smilax(英名greenbrier/catbrier)は熱帯・亜熱帯域を中心に全世界に分布し,約350種を含む。日本には8種ある。シオデS.riparia A.DC.は葉がうすく卵形で,茎にとげがなく,果実は黒熟する。若芽はやわらかく,食用になる。サルマメS.biflora Sieb.var.trinervula(Miq.)Hatusimaは葉が小型で,花は1~3個ずつつく。

 サルトリイバラ属は托葉をもつこと,網状脈をもつことなど特殊化した性質が多く,サルトリイバラ科として独立させることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルトリイバラ」の意味・わかりやすい解説

サルトリイバラ
Smilax china

サルトリイバラ科のつる状低木。東アジアの暖温帯に分布し,日本の山野に普通に見られる。地下茎は横にはって硬く,まばらにひげ根を出す。地上の茎は節ごとにジグザグに曲りまばらにとげがある。葉は径 5~10cmの円形ないし楕円形で,質が厚く表面に光沢がある。葉柄の基部には托葉があり,その先端が伸びて巻きひげになる。4~5月に,葉腋から短い柄をもった散形花序を伸ばして多数の花を球状につける。内外の花被片は各3枚で黄緑色,長さ 4~5mmである。雌雄異株で,果実は紅色で丸く,内部に黄褐色の種子が入っている。根茎を乾燥したものを山奇粮(さんきらい)または土茯苓(どぶくりょう)と呼び,古くから皮膚病や梅毒の薬として用いられた。名称は,茎にとげがあるので,サルがひっかかり捕えられるという意味である。

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百科事典マイペディア 「サルトリイバラ」の意味・わかりやすい解説

サルトリイバラ

日本全土,東アジアの山野にはえるユリ科の半つる性植物。茎は木質で強いとげがある。葉は広楕円形で,3〜5脈があり,基部に1対の巻きひげがある。春,葉腋から花柄を出し,小さな黄緑色花を多数,散形状につける。雌雄異株。果実は丸く,赤く熟す。葉は餅(もち)を包むのに用い,根茎は薬用とする。

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