日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルナシ」の意味・わかりやすい解説
サルナシ
さるなし / 猿梨
[学] Actinidia arguta (Sieb. et Zucc.) Planch.
マタタビ科(APG分類:マタタビ科)の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。シラクチヅル、コクワともいう。つるは高い木に絡みついて登り、髄は褐色で階段状の空所があり、太いものは幹が径15センチメートルとなる。樹皮は縦に長くはがれやすい。葉は厚くマタタビのようにつるの先の葉が白くなることはない。葉柄はやや赤みを帯びる。雌雄異株か、同じ株に単性花と両性花が混じる。夏、白色花をつけ、雄花と両性花は集散花序となり、雌花は単生する。果実は液果でやや球状、長さ約2センチメートル、緑褐色に熟す。日本全土の山林に生え、東アジアの暖帯に分布する。
果肉は甘酸味があり、果実酒にする。つるはじょうぶで腐りにくいので、筏(いかだ)を縛ったり、蔓(かずら)橋の材料とする。徳島県の祖谷(いや)川の蔓橋は観光名所となっている。また、太いつるを切ると、根のついたほうの切り口から水が出るので飲用とされ、山でのどが渇いたときに役だつ。名は、果実の形がナシに似ており、サルが食用とするためといわれる。
[杉山明子 2021年4月16日]