サルナシ(その他表記)tara vine
Actinidia arguta(Sieb.et Zucc.) Planch.

改訂新版 世界大百科事典 「サルナシ」の意味・わかりやすい解説

サルナシ
tara vine
Actinidia arguta(Sieb.et Zucc.) Planch.

山中で普通にみられるマタタビ科落葉つる性木本。サルが食用とし,猿酒をつくったというのでこの名がある。また,つり橋をつくり,いかだを組むのにこのつるを用いたので,ハシカズライカダムスビ異名もある。日本,朝鮮,中国に自生する。雌雄異株で,他の木にまとわりついて伸び,年間10mにも及ぶ。葉形はナシに似て,初夏,雄花葉腋ようえき)に数個,雌花は1個つける。果実は長球形の液果で長さ約2.5cm,淡緑黄色に熟する。コクワの名で果物としても利用されるが,甘酸の味が適度で美味である。種子は多数で黒ごま状。果実酒にも利用される。太幹は15cmに達し,横切りは木目模様がきれいで土瓶敷になる。実生,挿木で容易にふえるが,庭木としては強い刈込みが必要である。

 マタタビActinidia東アジアを中心に20種あまりが分布するが,そのうちサルナシの近縁種には本州南部から沖縄に分布するシマサルナシA.rufa(Sieb.et Zucc.)Planch.,中国のシナサルナシA.chinensis Planch.,台湾のタイワンサルナシA.formosana Hayataなどがある。シナサルナシは大果薄皮で甘味香気があるため,ニュージーランドで新しい果樹のキーウィフルーツとして育成・栽培されるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルナシ」の意味・わかりやすい解説

サルナシ
さるなし / 猿梨
[学] Actinidia arguta (Sieb. et Zucc.) Planch.

マタタビ科(APG分類:マタタビ科)の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。シラクチヅル、コクワともいう。つるは高い木に絡みついて登り、髄は褐色で階段状の空所があり、太いものは幹が径15センチメートルとなる。樹皮は縦に長くはがれやすい。葉は厚くマタタビのようにつるの先の葉が白くなることはない。葉柄はやや赤みを帯びる。雌雄異株か、同じ株に単性花と両性花が混じる。夏、白色花をつけ、雄花と両性花は集散花序となり、雌花は単生する。果実は液果でやや球状、長さ約2センチメートル、緑褐色に熟す。日本全土の山林に生え、東アジアの暖帯に分布する。

 果肉は甘酸味があり、果実酒にする。つるはじょうぶで腐りにくいので、筏(いかだ)を縛ったり、蔓(かずら)橋の材料とする。徳島県の祖谷(いや)川の蔓橋は観光名所となっている。また、太いつるを切ると、根のついたほうの切り口から水が出るので飲用とされ、山でのどが渇いたときに役だつ。名は、果実の形がナシに似ており、サルが食用とするためといわれる。

[杉山明子 2021年4月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルナシ」の意味・わかりやすい解説

サルナシ(猿梨)
サルナシ
Actinidia arguta

マタタビ科の落葉つる植物。アジア東部に広く分布する。日本各地の山地に普通に生える。全体はマタタビに似ているが葉先が白くならない。また茎の中央にある髄は褐色で大きなすきまが並び,縦断面でみると階段状の構造をもつのが特徴である。夏に,ウメに似た白い5弁の花を葉腋につけるが,多数あるおしべの葯 (やく) は褐色で,この点でも葯の黄色いマタタビと区別できる。果実は淡黄緑色に熟し,甘ずっぱい味がして,生食,または塩漬にすることもある。

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百科事典マイペディア 「サルナシ」の意味・わかりやすい解説

サルナシ

日本全土,東アジアの山地にはえるマタタビ科の落葉木性つる植物。幹は高さ10m,径15cmにも達する。葉は広卵形で先がとがり,縁には細鋸歯(きょし)がある。雌雄異株。5〜6月,葉腋に白い5弁花を開く。花は径1〜1.5cm,雄花序には3〜7花,雌花序に1〜3花つく。果実はやや球形で10〜11月に淡緑黄色に熟し,食べられる。つるを細工物とする。

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世界大百科事典(旧版)内のサルナシの言及

【マタタビ】より

…マタタビより北方に分布し,日本(北海道~四国),朝鮮,中国,シベリアに見られる。サルナシA.arguta Planch.(別名コクワ)はマタタビよりも幅広く,光沢のある葉を有する落葉つる性木本で,果実は円卵形,径1.5~2cmになり,熟しても緑色だが芳香と甘味があって美味である。日本から中国東北地方に分布する。…

※「サルナシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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