改訂新版 世界大百科事典 「サローヤン」の意味・わかりやすい解説
サローヤン
William Saroyan
生没年:1908-81
アメリカの小説家,劇作家。アルメニア系移民の子としてカリフォルニア州フレズノに生まれ,幼時父を失い孤児院で過ごす。中学中退後,郵便配達など職を転々としたが,貧しい文学青年の意識を写実とファンタジーの混じった文体で描いた短編《空中ブランコに乗る大胆な若者》(1934)で認められた。以後,戯曲,長編,短編を次々に発表し,1939年には戯曲《わが心は高原に》がブロードウェーで評判となり,同年の《君が人生の時》で翌年ピュリッツァー賞の受賞が決定したが,彼は受取りを拒絶した。小説では少年を主人公にした《わが名はアラム》(1940)と《人間喜劇》(1943)が有名で,ユーモアとペーソスにあふれる自由奔放な語り口で,カリフォルニアを舞台に貧しい善良なアルメニア系の人々の底抜けに明るい生き方を描いている。その他《ロック・ワグラム》(1951),《人生の午後のある日》(1964),短編集《アッシリア人たち》(1950)などがある。
執筆者:井上 謙治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報