サワード(その他表記)al-Sawād

改訂新版 世界大百科事典 「サワード」の意味・わかりやすい解説

サワード
al-Sawād

〈黒〉または〈黒い物体〉を意味するアラビア語。都市近郊の農耕地帯のほか,とくに現在のイラク共和国南部肥沃沖積平野をサワードと呼んだが,北限については諸説がある。前イスラム時代から南アラブが進出し,ヒーラal-Ḥīraを首都としてラフム朝を建設していた。633年夏,ハーリド・ブン・アルワリードは,ヤマーマにムサイリマを破った後,付近の遊牧民の長ムサンナーの勧誘に応じてサワードに遠征し,ヒーラを攻略した。これがアラブの大征服の端緒であり,また最初の成果であった。638年にバスラ,639年にはクーファの二つの軍営都市が建設され,正統カリフ時代,ウマイヤ朝時代の東方経略の根拠地となった。アッバース朝の初期,その中央部に首都バグダードが建設され,サワードは同朝の政治・経済・軍事・文化の中心地となった。エジプトと並んでイスラム世界有数の穀倉地帯であるため,歴代のカリフ,総督は,開墾,運河の開削などに意を用いて農地としての生産性向上に努めた。しかし,一方でザンジュの乱やカルマト派の反乱などの場ともなり,モンゴルの侵入以降は荒廃が著しく,その生産性は衰退の一途をたどった。サワードはイスラムに征服された最初の農耕地帯であったため,その時の租税徴収の実態が他の地域および後世租税制度参考となる。そこで当地域における第2代カリフ,ウマル1世租税政策の実態をめぐって法学者の論争が起こった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サワード」の意味・わかりやすい解説

サワード
al-Sawād

チグリス,ユーフラテス両川下流域の肥沃な沖積平野。現在のイラク共和国の中南部にあたる。7世紀にアラブが征服した最初の農耕地帯で,ウマイヤ朝アッバース朝時代を通じて帝国の最も重要な穀倉地帯の一つであった。主要生産物は小麦となつめやし。現在は塩害のためにかなり生産力が低下している。

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