サント・ブーブ(読み)さんとぶーぶ(英語表記)Charles Augustin Sainte-Beuve

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サント・ブーブ」の意味・わかりやすい解説

サント・ブーブ
さんとぶーぶ
Charles Augustin Sainte-Beuve
(1804―1869)

フランスの文芸批評家。北フランス、ブローニュ・シュル・メールに生まれる。自然科学を学び、科学的精神と方法を身につけるが、文壇にはロマン派の批評家、詩人として出発した。『ジョゼフ・ドゥロルムの生涯、詩および思想』(1829)など数冊の詩集、また唯一の小説『愛欲』(1834)を発表するが、詩人、小説家としては失敗し、ロマン派との関係を断つ。やがて文芸批評家というより、むしろ人間批評家として、科学的立場にたつ「精神の博物学」の体系化を図る。しかしこの計画は成功するはずもなく、この破綻(はたん)がかえって柔軟な批評精神による人間性探究の成功につながる。その成果として、17世紀フランスのジャンセニスムの本拠ポール・ロアイヤル教団をめぐるさまざまな人物の個性を追究する大著『ポール・ロアイヤル史』(1840~60)がある。1851年以来、毎月曜の新聞紙上に連載した『月曜閑談』正編15巻・続編13巻によって、19世紀フランス文芸批評家として不動の地位を確立した。アカデミー会員。

[土居寛之]

『辰野隆監修『サントブーヴ選集』4巻(1943~50・実業之日本社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サント・ブーブ」の意味・わかりやすい解説

サント=ブーブ
Sainte-Beuve, Charles Augustin

[生]1804.12.23. ブーローニュシュルメール
[没]1869.10.13. パリ
フランスの批評家,詩人,小説家。パリで文学,薬学を学ぶ。 1824年『グローブ』 Le Globe紙上で批評活動を開始。ユゴーらのロマン派詩人と親交を結び,詩集『ジョゼフ・ドロルムの生涯,詩および思想』 Vie,poésies et pensées de Joseph Delorme (1829) ,小説『愛欲』 Volupté (34) を著わした。のち批評に専念,綿密な調査と作家に対する深い理解,共感を示す幾多の研究を発表して,フランス近代批評の父と呼ばれた。主著『ポール・ロワイヤル』 Port-Royal (40~48) ,『文学的肖像』 Portraits littéraires (44) ,『月曜閑談集』 Causeries du Lundi (51~62) など。

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