日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザバリツキー石」の意味・わかりやすい解説
ザバリツキー石
ざばりつきーせき
zavaritskite
蒼鉛(そうえん)(ビスマス、Bi)の酸化フッ化物。ビスムチル基bismuthyl(化学式(BiO)1+)のフッ化物とみることもできる。マットロック石matlockite(PbFCl)とともにマットロック石系を構成する。自形未報告。多く粉末状物質の塊状集合体をなす。花崗(かこう)岩、砂岩などの交代作用の産物として生成されたグライゼン(英雲岩)あるいはこれに伴われる気成鉱脈鉱床中に自然蒼鉛あるいは輝蒼鉛鉱の分解物として形成される。日本では岐阜県中津川(なかつがわ)市恵比寿(えびす)鉱山(閉山)で、自然蒼鉛の周囲を取り囲む分解物として産したことが知られている。
共存鉱物は自然蒼鉛、輝蒼鉛鉱、泡蒼鉛、蒼鉛土、石英など。同定は自然蒼鉛との密接な共存、非常に大きい比重による。蒼鉛土は外観上類似するが、もう少し緑色がはっきりしている。恵比寿鉱山でも最初は蒼鉛土と判断されていた。命名はロシアの岩石学者で科学アカデミー会員アレクサンドル・ニコラエビッチ・ザバリツキーAleksandr Nikolayevich Zavaritsky(1884―1952)にちなむ。
[加藤 昭 2016年9月16日]