日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒼鉛土」の意味・わかりやすい解説
蒼鉛土
そうえんど
bismite
蒼鉛の酸化鉱物の一つ。化学式で示す際には他の同質異像相と区別するため、α(アルファ)-Bi2O3と書かれる。合成相として知られるβ(ベータ)-Bi2O3は正方相であるが天然では知られていない。γ(ガンマ)-Bi2O3は天然のシレン石に対応すると考えられていたが、これの正確な化学組成はBi12[O16|SiO4]であることが明らかにされ、結局γ-相はBi3+12.5Bi5+0.5O20に対応するらしいということになっている。なお1995年に記載された新鉱物スフェロビスモアイトsphaerobismoiteは理想式Bi2O3が与えられているものの、計算比重が蒼鉛土の9.36よりかなり小さい7.17と与えられており、はたしてこれが蒼鉛土と同質異像関係にあるかどうか疑問視する説もある。
確実な自形は未報告。すべて土状あるいは塊状。日本での産出は未確認情報はあるが確実でない。花崗(かこう)岩質ペグマタイト、気成鉱脈鉱床あるいは深成熱水鉱脈鉱床中の自然蒼鉛の直接分解物として生成され、さらに分解して淡黄色粉末状ないし皮膜状の泡蒼鉛を生ずる。同定は灰~黄色の外観とほとんど同じ色の条痕(じょうこん)。異常に大きな比重。計算値9.36。緻密(ちみつ)塊状、とくに粒状のものは案外硬度が高く、4を超える。合成物は半透明になると金剛光沢に近い光沢をもつが、天然でこのようなものは知られていない。命名は主成分の蒼鉛にちなむ。
[加藤 昭]