シチトウイ(読み)しちとうい

改訂新版 世界大百科事典 「シチトウイ」の意味・わかりやすい解説

シチトウイ
Chinese mat-grass
Cyperus malaccensis Lam.ssp.brevifolius(Böcklr.) T.Koyama

和名薩南七島に生える藺の意で,琉球表という丈夫でやや粗い畳表を作るカヤツリグサ科の多年草琉球藺(りゆうきゆうい)ともいう。水湿地に生え,時に沼田に栽培される。茎は横にはった根茎から立ち上がり,高さ90cm,幅5mmくらいの三稜形で,節はなく,基部に1~2枚の短い葉身をもった葉がある。散形花序は長さ10cmくらい,苞葉は3枚ほどで短く,枝は6~10本で,まばらに薄い赤褐色で線形の小穂をつける。花期は6~9月。中国南部に野生し,中国と日本で時々栽培される。基本変種は地中海地方,インドから東南アジアに広く分布している。

 シチトウイの長い茎を花期の終りころに刈り取って,二つに割き,日干しにしたものから畳表,ござ,草履の表などを編む。中国やインドネシアでは基本変種の茎も同様に利用し,手さげ籠,夏用のハンドバッグなども作る。大型のカヤツリグサ類の茎は編料としてよく利用される。朝鮮でワングルといって栽培もされるカンエンガヤツリも,茎の皮部を干して,光沢のある編料とし,夏帽子,花むしろ,煙草入れなどに利用し,髄の部分からは綱を作る。熱帯アジアでは大型のC.elatus L.の葉や茎,オオホウキガヤツリC.digitatus Roxb.,オオハナビガヤツリC.imbricatus Retz.,C.pangorei Rottb.などの茎が同じように利用されている。フトイ属の茎も,長く節がないため編料として好まれている。
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百科事典マイペディア 「シチトウイ」の意味・わかりやすい解説

シチトウイ

リュウキュウイとも。中国南部原産の湿地にはえるカヤツリグサ科の多年草。関東以西の暖地や東アジアで栽培され,また野生化している。茎は三稜形で,地下茎から直立し,高さ1.5mに達する。葉は短く被針形で,葉鞘がかたく茎を包む。秋,茎頂にカヤツリグサに似た花をつける。茎の繊維は強く,乾燥して畳表(琉球表),花むしろ,ぞうりなどとする。薩南の七島(吐【か】喇(とから)列島)から伝わったのでこの名がある。
→関連項目繊維作物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シチトウイ」の意味・わかりやすい解説

シチトウイ
しちとうい / 七島藺
[学] Cyperus malaccensis Lam. subsp. monophyllus (Vahl) T.Koyama
Cyperus monophyllus Vahl

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の多年草。太い根茎があり、根茎のところどころから茎が出る。草丈1~1.5メートル、茎の断面は三角形。葉身は退化し、葉鞘(ようしょう)部だけになっている。花期は夏から秋。沖縄、中国に分布し、日本には1600年代に薩南(さつなん)七島(吐噶喇(とから)列島)から伝えられた。関東地方以西の暖地で栽培され、野生化した所もある。地下茎で繁殖させた苗を水田に植え、収穫した茎で畳表や花莚(むしろ)をつくる。また草履(ぞうり)や手提げ袋もつくる。

[木下栄一郎 2019年7月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シチトウイ」の意味・わかりやすい解説

シチトウイ(七島藺)
シチトウイ
Cyperus monophyllus

カヤツリグサ科の多年草。リュウキュウイともいう。沖縄,台湾および中国南部に分布し,海水の出入りする浅い水中に生える。根茎は長く横にはい,茎は3稜柱形で直立し高さ1~1.5mに達する。秋に,茎の先端花被のない小花を穂状につける。茎を刈って畳表をつくり,これを琉球表または七島表という。関東以西の水田でときどき栽培されることがある。

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世界大百科事典(旧版)内のシチトウイの言及

【豊後国】より


[社会経済]
 各藩領とも領内産業の奨励に力を注いでいるが,新田開発のための用水確保には初期から積極的に取り組み,1645年岡藩の緒方上井路をはじめ,50年(慶安3)府内藩の初瀬井路,62年岡藩の城原(きばる)井路など,大分,大野,直入郡などでは河川を利用しての井路開発が行われ,杵築藩など国東郡では溜池築調が中心となっている。 農産物では,初期では木綿栽培がかなり行われているが,17世紀中葉に導入されたシチトウイ(七島藺)は別府湾沿岸の国東,速見,大分郡地方で普及し,農家の貴重な現銀収入源として文字どおり豊後の国産品となっている。また,ハゼ(櫨)は18世紀にはいって日田郡地方を中心にひろく栽培され,日田商人の活動の一助となっている。…

※「シチトウイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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