しゃあ

精選版 日本国語大辞典 「しゃあ」の意味・読み・例文・類語

しゃあ

  1. 〘 感動詞 〙 ( 「しゃ」の変化した語 )
  2. 人をあざけりののしるときに発する語。
    1. [初出の実例]「シャアこしゃくなる鎌倉武士、義経是にあることを早知ったるにや」(出典:歌舞伎・御摂勧進帳(1773)四立)
  3. 驚いたり、事がうまくはこんだりしたときに発する語。
    1. [初出の実例]「其敵といふは、此家の主山名先生、シャア、コリャ声が高い」(出典:浄瑠璃・本朝檀特山(1730)二)

しゃあ

  1. 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる ) 水などが勢いよく流れ落ちるさま。しゃあしゃあ。
    1. [初出の実例]「細君は水道の水をしゃあと云はせながら」(出典:田楽豆腐(1912)〈森鴎外〉)

しゃあ

  1. 〘 名詞 〙 大分県臼杵市の北部にある津留(つる)地区漁民の古い俗称。打瀬(うたせ)網漁業をし、魚がとれると行商に出かけた。〔随筆・関秘録(1761‐64頃か)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「しゃあ」の意味・わかりやすい解説

シャア (しゃあ)

大分県臼杵市北部の都留(つる)に住む漁民を呼ぶ俗称。1605年(慶長10)に,当時の安芸国能地(のうじ)(現,三原市内)から移住した平家舎人(とねり)の車者の子孫であるという伝承がある。シャアという呼称も車者に由来するとされている。《関秘録》巻5には,〈車捨は豊後の辺に居す。肴など商ひける者なり。百姓の交もならず。尤縁をもむすばず。其類計にて暮す。(中略)魚など売るにもしゃあよしゃあよと呼〉とある。その漁場漁法などは能地の漁民と共通する部分が多い。一般には,打瀬(うたせ)網漁業に従事し,夫婦同乗して瀬戸内海の各地に出漁し,妻たちが魚を売り歩いたり,米,麦などの農産物と交換する役割分担が維持されてきた。この形態がその後も,行商船の形で残り,夫が船の運航をし,妻がさまざまな商売をするという方式が継続されている。やがて大分県内のミカンやカボチャなど都留近隣の特産物を扱い,その他の農産物以外の商品も販売するようになったが,依然としてその経済的実権は妻が握り,夫はもっぱら船の運航のみを行ってきた。やがて船の大型化とともに,セメント石炭の運搬,あるいは大阪港内の艀(はしけ)船として夫婦で働くようになるなど,もっぱら船を中心とした伝統的生活を続けてきた。
家船(えぶね)
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「しゃあ」の意味・わかりやすい解説

しゃあ

かつての大分県北海部郡海辺村津留に居住した人々の通称。近世初頭に安芸国能地から移住した者の子孫と伝えられている。古代における海人部 (あまべ) に系譜をもつ人々と目され,かつては瀬戸内海を主たる生業の場とし,打瀬網や手繰網を使いながら各地に出漁した。その妻女は漁獲した魚類を米や麦などの主食と交換して生計を立てた。のちには近くで産出するみかんやかぼちゃ,備前焼植木鉢なども扱って船を利用する商徒となり,1935年頃現地近くにセメント工業が起るに及んで,原石や石炭の運搬にあたるようになってからは,大阪港のはしけ稼業に夫婦で従事する者もふえた。

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