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家船 えぶね

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

家船
えぶね

陸上に住居をもたず,船を家として水上生活をする漁業者をいう。元来は長崎県の海上漂泊漁民をさしてエブネ,エンブと呼んだが,最近の研究では瀬戸内海のノウジ,フタマドと呼ばれる漁民も家船に含めるようである。家船は古代の海人部 (あまべ) の残留とする説もあるが,明らかでない。こうした水上生活者は,中国,台湾,東南アジアにもみられる。

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デジタル大辞泉の解説

え‐ぶね【家船】

《「えふね」とも》九州北西部、特に長崎県沿岸で、住居として一家族が船に乗り、漁業行商をして生活していた漂泊漁民。

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百科事典マイペディアの解説

家船【えぶね】

小舟を日常の住居とする漂泊漁民。おもに長崎県西彼杵(にしそのぎ)郡や五島列島根拠地とするものをさしたが,大分県臼杵(うすき)市を根拠地として瀬戸内海で漁をするノウジあるいはシャアと呼ばれる同種の漁民も含めることが多い。

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世界大百科事典 第2版の解説

えぶね【家船】

九州長崎県の西海岸から五島列島,壱岐対馬などに分布していた一群の海上漂泊漁民の集団。方言ではエンブと呼ばれていた。古代の海部(あまべ)とのつながりが十分考えられるものの確たる証拠はない。ただ各地に分布する海人(あま)とともに古くから漁業専門に生きてきた専業漁民として,日本の漁業史研究の上で欠かすことのできぬ存在である。その生活の特徴は,陸上に一片の土地も持たず,かつ家族全員が家船と呼ばれる船の上で生活していたことである。

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大辞林 第三版の解説

えぶね【家船】

〔「えふね」とも〕
船を住居とし、漂泊的漁労生活を営んだ漁民。瀬戸内海などにみられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

家船
えぶね

九州北西部、とくに長崎県の沿岸を根拠地とし漂泊的な生活を送っていた漁民集団。集団ごとに根拠地の名を冠して「瀬戸家船」「崎戸(さきと)家船」などとよばれていた。かつては家族単位になる複数の船が集まって小船団を構成し、鉾(ほこ)突き漁、潜水漁、葛網(かずらあみ)漁に従事し、漁があると沿岸各地の船だまりに入った。漁獲物は婦人たちの手によって船だまり周辺の農村で農作物との物々交換に向けられた。古く家船は陸上には土地や住居をいっさいもたなかったといわれるが、正月、盆、竜神祭のおりには根拠地に集結し、このときに寄合や結婚式も行われた。近世以降宗門改めによって檀那(だんな)寺をもつ必要に迫られたこと、死者の埋葬問題が生じたことなどが因となって徐々に陸地への定着化が始まった。
 明治以降は義務教育の浸透、船の動力化、さらに漁業の流通機構の改善が進み、昭和30年代にはほとんどの家船が根拠地に家を構え、厳密な意味での家船はほぼ消滅した。なお、家船とはよばれていないが、かつては海上漂泊漁民で、家船と類似した生活慣習をもつ集団が岡山や広島県下の瀬戸内海地域にも少なくなかった。[野口武徳]
『大林太良編『山民と海人』(『日本民俗文化大系5』1983・小学館)』

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世界大百科事典内の家船の言及

【瀬戸内海】より

…明治以降は鉄道の発達によって沿岸航路が廃止されたところもあり,大型の汽船が普及してからは小規模な港町の多くは衰退した。第2次大戦前までは沿岸独特の習俗として,家族が単位となって船上で生活のいっさいをまかなう家船(えぶね)が,現在の広島県因島市箱崎,三原市能地(のうじ)などを根拠地として内海各地で多くみられた。また大陸伝来のものと考えられる独特の石ぶろ(蒸ぶろの一種)が,古くから沿岸西部,とくに山口県で多くつくられ,住民の医療目的を兼ねたいこいの場となっていたと思われる。…

【能地】より

…広島県三原市に属する漁村で,古くより船を住いとして生活する家船(えぶね)漁民の出身地として有名である。家船漁民としては,このほか長崎県の西彼杵や平戸島の幸ノ浦,あるいは五島を根拠地とするものが知られている。…

【漂海民】より

…後者のなかでは北ボルネオからフィリピンのスルー諸島,ミンダナオ島南部沿岸に分布するバジャウ族Bajauが著名である。日本では〈家船(えぶね)〉と呼ばれる漂海民が,長崎県西彼杵(にしそのき)郡や瀬戸内海の各地に分布していた。それぞれ本拠地を持ち,盆,正月などには必ず帰港することを掟としていた。…

※「家船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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