フランスの小説家。本名ジャック・ブーテロー。西仏シャラント県バルブジューの富裕なコニャック醸造業者の家に生まれる。文芸出版のストック社を共同経営していたが、熱烈に愛し合う夫婦アルベールとベルトの間の感情の微妙な交錯を分析した『祝婚歌』(1921)で一躍名声を得た。『幸せなる者の歌』(1927)では離婚、『バレー一家』(1929)では相続、『エバ』(1930)では恋の幻影と肉体的行き違い、『クレール』(1931)では死を契機として男女間に揺曳(ようえい)する感情の機微を、ほとんど科学的な正確さで解剖しているが、繊細な文体、巧まざる流麗な語りで、モラリスト的な中庸さと相まって多くの読者を獲得した。『感情的宿命』(1934~36)3巻で、ある陶器製造業の一家の運命をたどる社会小説を試みたが、『ロマネスク』(1938)で得意の夫婦小説に戻った。第二次世界大戦直前、かなり熱烈な国家社会主義的発言をしたことがたたり、戦後は評判を落としたが、ロジェ・ニミエらの新右派の作家たちからは敬愛された。小説のほかに『隣人愛』(1932)、『バルブジューの幸福』(1935)、『愛をめぐる随想』(1927)などの優れたエッセイ集もある。
[平岡篤頼]
『佐藤朔訳『結婚』(新潮文庫)』▽『神西清訳『愛をめぐる随想』(新潮文庫)』
フランスの小説家。本名ジャック・ブーテローJacques Boutelleau。シャラント県の富裕な家庭に育ち,パリで法学士となり,出版社ストックの経営陣に加わる。1921年に《祝婚歌》(フェミナ賞受賞)を発表して文壇に登場するが,これは夫婦間の愛情の機微を描いた心理小説であった。彼自身の結婚→幸福な家庭生活→離婚の体験を基にするこの作品が,以後の小説の主調となった。モラリスト風の箴言を巧みに織り交ぜたその〈夫婦小説〉は,明晰で沈着な文体によって幅広い読者を獲得した。1931年の《クレール》(アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞)につづいて,《感情的宿命》三部作(1934-36)を発表するが,後者は夫婦間のドラマの領域を超えて,家族全体から社会の仕組みにまで構想の枠がひろがっている。その他,《ロマネスク》(1938),《空想家たち》(1948)等の作品がある。第2次大戦後は,対独協力の疑いをもたれて難渋の日々がつづいた。
執筆者:若林 真
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