日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャルパック」の意味・わかりやすい解説
シャルパック
しゃるぱっく
Georges Charpak
(1924―2010)
フランスの実験物理学者。ポーランドに生まれ、1946年にフランスに帰化した。1954年にコレージュ・ド・フランスで、原子核物理学についての実験的研究で博士号を取得。1959年からは、素粒子物理学の国際的な研究機関であるヨーロッパ原子核研究機構(CERN:Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire)で研究を進める。
素粒子の実験で発生する小さな粒子の軌跡を、精密に効率よく測定する新しい技術を次々に開発した。1968年には、素粒子測定器の中にワイヤーを何本も張り巡らして、粒子がそばを通ったことを電気信号としてとらえる「多線式比例計数箱」という新技術の開発に成功。写真乾板などに写った粒子の軌跡を目で確認して数えていた従来の方法に比べて粒子の観測効率を飛躍的に高め、素粒子実験の新時代を開いた。新粒子の発見で1976年のノーベル物理学賞を受賞したB・リヒター、1984年のC・ルビアなどの業績も、この測定技術の成果のおかげである。粒子測定器についてのこれら一連の発明や改良、とくにワイヤーを使った技術を編み出した業績に対して、1992年にノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]