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個人主義 こじんしゅぎindividualism

翻訳|individualism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

個人主義
こじんしゅぎ
individualism

個 individuumの意義や価値を重視する立場であり,individualismには個体論の意味も含まれる。個体論としては実在するのは個体のみで普通者は虚構であるとする唯名論や,存在論的に多くの個体の実在を認める多元論がある。個人主義はまず倫理学の場面でいわれる。すなわちそれは行為における個人の価値を重視し,個人を手段とはならない自己目的とみなして,個人性の実現を倫理的行為の原理とする立場。代表的論者としてソフィストたち,キュニコス派,キュレネ派,エピクロス派,ストア派,スピノザ,ホッブズ,ヒューム,ライプニッツ,カントなどがいる。これがさらに社会,政治学的場面に拡張されると,社会や国家は個人の単なる集団であって,個人の目的に奉仕すべき手段とみる K.フンボルト,A.スミス,J.S.ミル,P.プルードン,H.スペンサーなどの説が生れる。また史学では歴史の推進力を偉人の力に求める立場を個人主義という。また宗教においては人格の価値を強調し個人の魂の救済を説いたキリスト教においても,それは教会という共同体の上に基礎づけられるものであったが,近世にいたって神と個人との直接的な交わりを主張するプロテスタント各派が成立し,そこに個人主義をみることができる。この立場に立つ現代の代表的神学者に E.ブルンナーがいる。日本国憲法は「すべて国民は,個人として尊重される」と規定し (13条) ,家族生活においては個人の尊厳を尊重するべきこととし (24条) ,近代個人主義思想を継受していることを表明している。 (→個人の尊厳 )  

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デジタル大辞泉の解説

こじん‐しゅぎ【個人主義】

individualism》国家・社会の権威に対して個人の意義と価値を重視し、その権利と自由を尊重することを主張する立場や理論。→全体主義
利己主義」に同じ。

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百科事典マイペディアの解説

個人主義【こじんしゅぎ】

英語individualismなどの訳。個人の尊厳とその自己決定を最優位とする立場をいう。欧語はラテン語individuus(不可分なもの。ギリシア語のアトムに相当)に由来し,その意味で自然思想における原子論に対応する。
→関連項目国民精神作興詔書

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世界大百科事典 第2版の解説

こじんしゅぎ【個人主義】

個人主義individualismという語は西欧で生まれたが,古くからある語ではない。個人という語の起源は古い。しかしトックビルによれば,アンシャン・レジームの時代には,個人は集団から十分に解放されておらず,したがって単独の個人を前提とする個人主義という造語は,フランス革命以後の近代になって初めて用いられるようになったのである。個人主義という語には多様な意味が与えられているが,どの場合にも含まれている成分として,人間の尊厳と自己決定という二つの要素を挙げることができる。

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大辞林 第三版の解説

こじんしゅぎ【個人主義】

〔individualism〕 個々の人格を至上のものとして個人の良心と自由による思想・行為を重視し、そこに義務と責任の発現を考える立場。 → 全体主義
その人の属している組織全体・社会全体のことを顧慮せずに、個人の考えや利益を貫く自分勝手な態度。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

個人主義
こじんしゅぎ
individualism

一般に、社会もしくは国家と個人との対立を前提とし、個人の側に重きを置く立場が個人主義とよばれる。それは理論的には、実在するのはもろもろの個人であり、社会や国家はそれ自身としては実在性をもたず、個人の集合をさす名称にすぎないとする社会唯名論と立場を一にする。個人主義は、この意味では個人実在論であって、逆に社会の実在を強調する社会実在論に対立する。個人主義は、政治的には、個人は国家の制約を受けずに自由に個人的幸福を追求する権利があると主張し、国家はむしろ個人の幸福追求を保障し推進する役割を果たすべきであり、またそれにとどまるべきだ、と考える。つまり自由主義であって、経済活動のうえでは国家による干渉や統制を認めず、自由放任主義をよしとする。いっさいの国家権力を否定し、国家の廃棄を主張する無政府主義も、個人の幸福を主眼とする限りでは、個人主義の政治的一形態とみることができる。
 哲学のうえでは、古代ギリシアのプロタゴラスのように、客観的で普遍的な真理は存在せず、真理は各人にとって相対的であり、その限りで主観的であるとする相対主義や主観主義の主張が個人主義に属する。また存在するのは自意識のみであり、他人をも含めてすべては自意識の観念にすぎないと主張するイギリスのバークリー(1685―1753)の独我論も、個人主義の一つの現れといえよう。
 倫理学のうえでは、個人の幸福が何に求められるかによって、個人主義の諸形態が区別される。私利、私益としての幸福だけを追求し、その際他人の幸福をいっさい顧みない個人主義は、いわゆるエゴイズムであり、利己主義であって、道徳的には悪とされる。また幸福がもっぱら自己の快楽に置かれるならば、それは快楽主義もしくは享楽主義としての個人主義である。ドイツの哲学者シュティルナー(1806―56)の「唯一者」の思想は、いっさいは唯一者としての自我の所有として享受されるべきであると説く点で、この種の個人主義の代表といえる。なお、古代ギリシアではエピクロスが個人主義的快楽主義を主張したとされているが、エピクロス自身は何者にも心を乱されることのない境地(アトラクシア)に個人の幸福を認めたのであって、個人主義者ではあっても、単なる快楽主義者からは区別されなければならない。
 他方、個人の幸福は究極にはその個人の人格の完成にあるとする人格主義もまた個人主義に数えられる。その場合でも、人格の完成が、人間の諸能力の調和的発展によって可能であるとする見方もあるし、他人にはない独自の個性の発揮によって可能であるとする個性主義的な見方もある。また、人格の完成は道徳的人格の確立以外にないとするカントの見方は、倫理的個人主義とでもいえよう。こうした人格主義とは別に、他人と代置不可能な個人の実存とその自由を重視する実存思想にも、ある意味では個人主義の名称を与えることができよう。
 日本では、夏目漱石(そうせき)に『私の個人主義』(1915)という講演がある。彼はこの講演で、イギリス留学中に「自己本位」の思想に達したと語り、個性の発展を図る個人主義を説くが、しかし「自己の個性の発展を仕遂(しと)げようと思うならば、同時に他人の個性をも尊重しなければならない」とする。個人主義は「道義上の個人主義」でなければならず、「もし人格のないものが無暗(むやみ)に個性を発展しようとすると、他人を妨害する」結果になる。彼はまた「常住坐臥(ざが)国家の事以外を考えてはならない」といった偏狭な国家主義を批判するが、前述の個人主義が真の国家主義と矛盾しないことも主張する。なぜなら、国家存亡の際に、「人格の修養の積んだ人は、個人の自由を束縛しても国家の為(ため)に尽すようになるのは天然自然」だからである。漱石のこうした考えに、ヨーロッパの個人主義の反映をはっきりみることができよう。[宇都宮芳明]
『デュウイ、タフツ著、久野収訳『世界の大思想277 社会倫理学』(1966・河出書房新社) ▽『漱石全集11 評論・雑篇』(1966・岩波書店)』

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世界大百科事典内の個人主義の言及

【エゴイズム】より

…日常用いられている意味では,エゴイズム(利己主義)とは自己の欲望の充足あるいは利益の追求をもっぱら念頭において行動し,その行動が他者や社会一般に及ぼす迷惑を考慮に入れない態度を指す。エゴイズムという語は個人主義individualismという語と同じ意味に用いられることもある。しかし個人主義という概念は自律autonomyの要素を含むと考えるなら,エゴイズムはしばしば個人主義ではない。…

【原子論】より

…錬金術的な世界にあったR.ボイルのような人物も,原子論の論理に強くひかれた。それは,人間社会を〈個人individual〉のふるまいの総和としてとらえ,また,個人の働きを政治や倫理,さらにプロテスタンティズムの場合のように,宗教においてさえ根源とするような個人主義が急速に発達しつつあった17世紀後半のヨーロッパの状況と決して無関係ではない。ギリシア語に由来するatomとラテン語のindividuus(individualの語源)とはまったく同じ意味,すなわち〈分けられないもの〉であることに留意しよう。…

【日本社会論】より

…むしろそれは,〈協同団体主義corporativism〉として理解されなければならない。欧米近代の〈個人主義individualism〉と二元的に対比されるような全体主義holismなのでは決してない。 現実の日本人は,集団の中でそれぞれに独自の意思を押し通そうとする欧米型の個体的自律性を示さない。…

※「個人主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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