シュルツェ(読み)しゅるつぇ(英語表記)Maximilian Johann Sigismund Schultze

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュルツェ」の意味・わかりやすい解説

シュルツェ
しゅるつぇ
Maximilian Johann Sigismund Schultze
(1825―1874)

ドイツの動物学者。ベルリン大学で医学を学ぶ。ハレ・ウィッテンベルク大学解剖学助教授(1854)、ボン大学解剖学教授(1859)となる。脊椎(せきつい)動物、扁形(へんけい)動物、原生動物の組織や細胞について顕微鏡を用いて研究し、顕微解剖の新分野を開拓し、この領域の発展に大きく寄与した。「筋肉小体および細胞と名づけているものについて」という論文(1861)において、動物細胞の含有物であるサルコード(筋肉様物質)と植物細胞にみられる原形質は同一のものであると断定し、原形質という統一的な術語を確定したうえで、細胞はひとかたまりの原形質と一つの核をもっているという定義を初めて明らかにした。ほかに、脊髄神経経路、視神経、嗅(きゅう)細胞や魚の発電器の構造、渦虫(かちゅう)類および根足虫(こんそくちゅう)類の形態についても研究した。1862年には顕微解剖に関する専門誌『顕微解剖学論叢(ろんそう)』Archiv für mikroskopische Anatomieを創刊した。

片島 亮 2018年8月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュルツェ」の意味・わかりやすい解説

シュルツェ
Schultze, Max Johann Sigismund

[生]1825.3.25. フライブルク
[没]1874.1.16. ボン
ドイツの動物学者,細胞学者。ベルリン大学で J.ミュラー師事。のちハレ大学講師となり,ボン大学教授 (1859) ,同大学解剖学部長 (72) 。 1861年にシュルツェは,細胞とは細胞核とそれを取囲む原形質とが合体したものと定義した。これは,M.シュライデンらの細胞説において,細胞とは細胞膜によって取囲まれた小胞で,動植物の体を構成する単位と考えられたが,その後,細胞膜で明瞭に仕切られていない細胞が発見されて,細胞概念の解釈をめぐる混乱が生じたからである。彼の定義によって,細胞を単位として動植物のあらゆる組織を記述することが可能となり,以来,細胞という用語はこの意味に用いられることになった。その他,顕微鏡観察のために試料を固定・染色する手段としてオスミウム酸の使用を始めるなど,新技術の開発もした。 65年『顕微解剖学雑誌』 Archiv für mikroskopische Anatomieを創刊し,その編集にあたった。

シュルツェ
Schulze, Gottlob Ernst

[生]1761.8.23. ヘルドルンゲン
[没]1833.1.11. ゲッティンゲン
ドイツの哲学者。 1788年ヘルムシュテット,1810年ゲッティンゲン各大学教授。懐疑論立場に立ち,カントの批判哲学に反対した。 A.ショーペンハウアーの師。主著『アイネシデモス』 Aenesidemus (1792) ,『理論哲学批判』 Kritik der theoretischen Philosophie (2巻,1801) ,『人間的認識について』 Über die menschliche Erkenntnis (32) 。

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