(石川れい子 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
ヤブカ属の蚊(か)(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)によって媒介されるジカウイルス(Zika virus:ZIKV)に感染することで発症する感染症。ジカ熱とよばれることもある。ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで、名前はウガンダのジカ(Zika)の森林に住むサルで初めて確認されたことに由来する。おもにはジカウイルスをもつ蚊に刺されることで感染するが、輸血や性行為によって感染することもある。ミクロネシアやポリネシアで大流行したほか、近年では南米のチリやブラジルおよびコロンビアで流行がみられた。日本では2013年(平成25)以降では数例の感染が確認されたが、これらは渡航時に海外で感染したもので国内での感染例はない。ジカウイルス感染症は日本の感染症法においては4類感染症に指定されており、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症に病型分類されている。
症状はデング熱に似て、3~12日の潜伏期間を経て発熱、発疹(ほっしん)、結膜充血、頭痛、関節痛、筋肉痛などが数日(4~7日程度)続く。症状の程度はデング熱より軽いが、免疫力が極端に低下している場合などではまれに死に至ることもある。ただし不顕性感染(感染しても症状が現れない)が80%を占めることから、感染に気づかないことも多い。
ほかに、消化器症状や運動麻痺(まひ)を起こすギラン・バレー症候群や神経症状を伴う症例も報告されている。ブラジルの流行では感染した妊婦から胎児に感染し、出生児に小頭症が多発して問題となった。
ジカウイルス感染症に有効なワクチンはなく、また治療も解熱鎮痛薬の投与など対症療法にとどまる。そのため感染予防は、なにより流行地で蚊に刺されないようにすることで、またとくに妊婦は流行地への渡航を控えるようにする。
[編集部 2017年8月21日]
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