日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャコビアン様式」の意味・わかりやすい解説
ジャコビアン様式
じゃこびあんようしき
Jacobean style
イギリスのジェームズ1世の治世(1603~25)に行われた建築・工芸の様式。先行するエリザベス様式との連続性は強く、垂直式ゴシックのモチーフと、いささか濫用ぎみの古典古代の装飾との混在に特徴がある。当時建造された多くの貴族の邸宅は、共通して1階にホールと食堂、2階にロングギャラリーを有しており、規模こそ大きくなったものの、エリザベス朝ほどの華美さはなく、じみで落ち着いたたたずまいを示すものとなっている。また石材にかわってれんがが盛んに用いられ、窓も小さな矩形(くけい)のものに変わっている。ウィルトシャーのチャールトン・ハウス(1607)やハートフォードシャーのハットフィールド・ハウス(1607~12)、ウォーリックシャーのアシュトン・ホール(1618~35)などがその代表的な作例である。この様式の家具は、おおむねオーク材が用いられており、メロン形の脚部をもった装飾過多の重厚なデザインのものが多い。
[谷田博行]