ジャコーニ(読み)じゃこーに(英語表記)Riccardo Giacconi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャコーニ」の意味・わかりやすい解説

ジャコーニ
じゃこーに
Riccardo Giacconi
(1931―2018)

アメリカの天文学者。イタリアのジェノバ生まれ。1954年にミラノ大学宇宙線物理学の研究により博士号を取得。1959年にアメリカのアメリカ科学工業という民間会社に就職した。この会社は、国の防衛当局やNASA(アメリカ航空宇宙局)から契約をもらい、おもにマサチューセッツ工科大学MIT)を出た若い科学者に仕事を与えるためにつくられた会社である。ここで天体の出すX線観測して天体の構造などを調べる「X線天文学」の開拓に乗り出した。宇宙からのX線は地球の大気に邪魔されて地上では観測できないため、人工衛星に観測装置を積むことを計画。1962年に打ち上げた装置で、太陽系外からくるX線を観測することに初めて成功した。1970年に打ち上げた衛星「UHURU(ウフル)」では、X線を強く出す天体の分布全天にわたって観測した。1981年から1993年まで、宇宙望遠鏡科学研究所の初代所長ヨーロッパ南天天文台台長を経て、1999年から2004年までアソシエイテッド・ユニバーシティーズ社代表。1982年から1997年までジョンズ・ホプキンズ大学教授。1998年からは同大学の研究職教授。宇宙から飛来するニュートリノの観測に成功したR・デービス小柴昌俊(こしばまさとし)とともに、新しい宇宙観測の手法を開拓した業績で、2002年のノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成 2019年1月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャコーニ」の意味・わかりやすい解説

ジャコーニ
Giacconi, Riccardo

[生]1931.10.6. イタリア,ジェノバ
[没]2018.12.9. アメリカ合衆国カリフォルニア,サンディエゴ
イタリア生まれのアメリカ合衆国の天体物理学者。X線天文学の開拓者。1954年イタリアのミラノ大学で博士号を取得。1959年アメリカでアメリカン・サイエンス・アンド・エンジニアリングに入社。1973年ハーバード・スミソニアン天体物理学センターに移り,1981~93年ジョンズ・ホプキンズ大学に設置された宇宙望遠鏡科学研究所の所長,1993~99年ヨーロッパ南天天文台所長,1999年アメリカ北東部大学連合の代表を務めた。1959年に大気で吸収されて地上でははかれない宇宙X線(→X線)の研究に着手し,ブルーノ・ロッシらと協力して X線望遠鏡のアイデアを出した。1962年にロケットで打ち上げた観測装置でさそり座方向に太陽系外として初めての強い X線源を確認した。さらに 1970年の長時間にわたり観測ができる X線観測衛星『ウフル』Uhuru(スワヒリ語で自由の意),1978年の X線観測器を積んだ衛星アインシュタインX線天文台,1999年のチャンドラX線観測衛星の打ち上げにも貢献した。X線観測衛星は,中性子星ブラックホールを含む二重星(→重星),活動銀河,クエーサーといった天体が X線源であることを確認し,銀河や星の活動や起源を調べる重要なデータを提供し続けている。1987年ウォルフ賞を受賞。2002年「宇宙X線源の発見に導いた天体物理学への先駆的貢献」で,レイモンド・デービス小柴昌俊とともにノーベル物理学賞を受賞した。(→天体物理学

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