ジュネーブ条約(読み)ジュネーブジョウヤク

デジタル大辞泉 「ジュネーブ条約」の意味・読み・例文・類語

ジュネーブ‐じょうやく〔‐デウヤク〕【ジュネーブ条約】

戦時における傷病者捕虜に関する国際条約。1864年にジュネーブで結ばれた、戦地での傷病兵救護と救護者の中立性保護のための条約に始まる。現在の条約は1949年に締結された、第一条約(戦地にある軍隊の傷病者の状態の改善)、第二条約(海上にある軍隊の傷病者、難船者の状態の改善)、第三条約(捕虜の待遇)、第四条約(戦時における文民の保護)の4条約と、1977年の二つの議定書からなる。
[補説]多く、第三条約をさしていう。

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精選版 日本国語大辞典 「ジュネーブ条約」の意味・読み・例文・類語

ジュネーブ‐じょうやく‥デウヤク【ジュネーブ条約】

  1. [ 一 ] 一八六四年、ジュネーブで開かれた国際赤十字会議で締結された条約。日本は明治一九年(一八八六)に加入赤十字条約
  2. [ 二 ] 一九四九年、ジュネーブ外交会議で採択された四条約(戦争犠牲者保護条約)、すなわち (イ)戦地にある軍隊の傷病者の状態改善条約 (ロ)海上にある軍隊の傷病者、難船者の状態改善条約 (ハ) 捕虜の待遇に関する条約 (ニ) 戦時における文民の保護条約。赤十字条約。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュネーブ条約」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ条約
じゅねーぶじょうやく

武力紛争時に敵対行為に直接参加しないか、戦闘外に置かれた者(つまり、傷病者、難船者、捕虜、文民)の保護を目的として、1864年以降ジュネーブで結ばれた諸条約をいう。現在では、1949年8月12日に作成された「戦争犠牲者保護条約」Geneva Conventions for the Protection of War Victimsの4条約を基本とし、同条約に対する77年6月10日の2追加議定書によって補完されている。

 ジュネーブ条約は赤十字条約ともよばれ、ナイチンゲールら篤志看護婦のクリミア戦争(1854)における傷病者救護の活動に刺激され、アンリ・デュナンがイタリア統一戦争(1859)の際の救護体験とそれに基づく傷病兵救護策を記述した『ソルフェリーノの思い出』の出版を契機に、ジュネーブ公益協会が各国に呼びかけて創設された国際赤十字の武力紛争時における傷病者救護の精神によって作成された。

 最初のジュネーブ条約(赤十字条約)は1864年8月22日に作成され、わが国は1886年(明治19)6月5日に加入した。この条約は陸戦における傷病者救護を目的としたもので、その後、1906年、29年の改正を経て49年の(第1)条約になっている。

 1899年7月29日「ジュネーブ条約ノ原則ヲ海戦ニ応用スル条約」が作成されたが、同条約は、1907年の改正を経て49年の(第2)条約となった。

 この精神を拡大し、戦闘外に置かれた「俘虜(ふりょ)ノ待遇ニ関スル条約」が1929年7月27日に作成されたが、改正され49年の(第3)条約=捕虜の待遇に関する条約となった。敵国の管轄下に置かれた文民の保護を目的として作成されたものが、49年の(第4)条約である。

 わが国は、この4条約に1953年(昭和28)10月21日に加入した。現在、世界のほとんどすべての国が加入している。

 締約国は、すべての武力紛争や占領時にこれらの条約を守るべきものとされ、敵国が締約国でなくても、条約の規定を受諾し適用するときは相互に条約に拘束され、内乱などの非国際的武力紛争の場合にも、最小限の規定(共通3条)を守ることが義務づけられている。

 追加議定書は、国際的武力紛争と非国際的武力紛争に分け、戦争犠牲者の保護を詳しく定め一般住民の保護、市民防衛、傭兵(ようへい)の不保護に言及している。

[宮崎繁樹]

『藤田久一著『国際人道法』(1980・世界思想社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュネーブ条約」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ条約
ジュネーブじょうやく
Geneva Conventions

武力紛争の際の傷病者,捕虜,文民の保護に関して規定した国際条約。赤十字条約とも呼ばれる。古くは,1864年の「戦地軍隊における傷者および病者の状態の改善に関する条約」およびその改正,追加条約を意味していたが,現在では第2次世界大戦後集大成され,1949年8月 12日にジュネーブの会議で採択された「戦地にある軍隊の傷者および病者の状態の改善に関する条約」 (第1条約) ,「海上にある軍隊の傷者,病者および難船者の状態の改善に関する条約」 (第2条約) ,「捕虜の待遇に関する条約」 (第3条約) ,「戦時における文民の保護に関する条約」 (第4条約) の4つの条約を総称する。これらの4条約は「戦争犠牲者保護条約」 Geneva Conventions for the Protection of War Victimsとも総称される。 50年 10月 21日に発効し,現在,世界のほとんどすべての国が加入している。日本は 53年4月に加入し,10月からその適用を受けることになった。この4条約は 429ヵ条の条文を有し,締約国間の宣言された戦争の場合だけでなく,すべての武力紛争の場合にも,また内乱の場合にも適用される。

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百科事典マイペディア 「ジュネーブ条約」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ条約【ジュネーブじょうやく】

赤十字条約

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世界大百科事典(旧版)内のジュネーブ条約の言及

【国際商法】より

…ただ傭船契約,箇品運送契約,海上保険契約における準拠法指定の黙示意思の探求については明文の規定がないから,旗国法,営業所所在地,運送区間,契約締結地などを総合的に考慮して決定するほかはなかろう。(5)手形,小切手 1930年および31年のジュネーブ条約(日本も批准し1933年公布)により,ヨーロッパ大陸法系諸国では,手形法・小切手法の統一が実現したが,全世界的統一にまでは至らなかった。同条約の作成に際しては,併せて国際私法の統一も行われたが,日本の手形法88条以下,小切手法76条以下はその成果である。…

【赤十字】より

…63年10月26日から29日まで開催された国際会議は赤十字規約を採択し,各国に1社の赤十字社Red Cross Societyおよび赤十字国際委員会の設立を決定した。64年ジュネーブに各国の政府代表が集まりジュネーブ条約(赤十字条約)に調印し,国際赤十字を発足させた。条約には,(1)戦時傷病者は敵味方の区別なく看護されること,(2)看護にあたる人員・資材・施設は中立として保護すること,(3)国際会議開催に尽力したスイスに敬意を表し,スイス国旗の色を逆さにした白地に赤十字を赤十字の標章として用いること(ただし,現在,イスラム教国では宗教的理由から十字を使うのを嫌い,赤新月社Red Crescent Societyという組織名で,赤新月(せきしんげつ)の標章を使っている),(4)加盟国は各国政府の公認した1国1社の赤十字社をつくってジュネーブ条約の完全履行に協力すること,などが規定された。…

【赤十字条約】より

…戦時の傷病兵,捕虜,抑留者などの保護を目的としてジュネーブで結ばれた諸条約の総称。ジュネーブ条約ともいう。赤十字の創始者J.H.デュナンが1862年《ソルフェリーノの思い出》を著し,負傷兵の救済団体の設立と条約による救済活動と保護を訴え,これに呼応して64年スイスはジュネーブにヨーロッパ16ヵ国代表を招請して会議を開き,そこで〈戦地にある軍隊の傷者・病者の状態改善に関する条約〉(1906,29改正)が締結された。…

【内乱】より

…非合法的手段によって政権を奪取しようとする試みの一形態。内戦ともいう。複合民族国家で一民族が自治を要求して武力に訴える場合(分離主義の運動)や,特定の政治的信条の下に集結し,現に政権を握っている勢力に反抗する場合などさまざまな発現形態がある。近代史上の内戦の例としては,アメリカの南北戦争(1861‐65)やフランスのパリ・コミューン(1871)がある。20世紀になるとロシア革命に続いてヨーロッパ各地で社会主義革命政権樹立の試みがなされ,ロシアはもとより,ドイツ,ハンガリーなどで反革命勢力との間で武力闘争が行われた。…

※「ジュネーブ条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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