日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョベルティ」の意味・わかりやすい解説
ジョベルティ
じょべるてぃ
Vincenzo Gioberti
(1801―1852)
イタリアの哲学者、政治家。生地トリノの宮廷付き司祭として、神学研究に励む一方、政治活動にも参加する。自由主義的・共和主義的思想のため、パリ、ブリュッセルなどで亡命の生活を送り、その間に『哲学研究入門』(1840)や、イタリアのリソルジメント(統一)に大きな精神的・政治的影響を与えた『イタリア人の倫理的、市民的優位について』(1843)など多くの著書を著した。1848年イタリアに帰り内閣に参与するが、政治的状況から翌1849年改めてパリに亡命、余生を哲学や政治に関する著述活動に捧(ささ)げた。その成果が『啓示の哲学』(1856)、『教会のカトリック的改革について』(1856)、『プロトロジア』(1857)などとして死後出版された。ロスミーニ・セルバーチとともに19世紀イタリアのキリスト教的唯心論の代表者として、感覚論に反対するが、同時にロスミーニを心理主義として批判し、自分の立場を本体論主義とよんだ。人間のあらゆる認識の根源たる直観において現れる絶対的・永遠的真理たるイデアは、理念的・可能的存在ではなく、現実的・絶対的存在たる実有(エンテ)、すなわち神自身であるとする。人間は知的活動において、「実有は存在者を創造する」のをみることができるとともに、自由な倫理的活動によって、「存在者は実有に帰る」という理念を成就(じょうじゅ)することができると考える。
[大谷啓治]