スコパス(読み)すこぱす(英語表記)Skopas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス
すこぱす
Skopas

生没年不詳。古代ギリシア彫刻家。プラクシテレス、リシッポスと並ぶ紀元前4世紀のもっとも著名な彫刻家。パロス島出身。父アリスタンドロスは青銅彫刻家。前377年ごろアテネに赴き、以後アッティカ、ペロポネソス、小アジア各地で制作。その作風は、プラクシテレスが神々の優美な様式を確立したのに対し、人間の内的感情の表出に傑出し、ヘレニスティック期彫刻の先駆をなした。古代の文献とその様式から彼の作と推定されるものに、テゲアのアテナ・アレア神殿の破風(はふ)彫刻とアスクレピオスとヒュゲイアの像(アテネ国立考古博物館)、エフェソスアルテミス神殿列柱の浮彫りハリカルナッソスのマウソレウム東フリーズの浮彫り(大英博物館)などがある。いずれも深く彫られた目や衣装の襞(ひだ)の表現に彼の特徴がみられる。

[前田正明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス
Skopas

ギリシアの彫刻家,建築家。プラクシテレス,リュシッポスと並んで前4世紀を代表する巨匠。パロス島出身と伝えられる。プラクシテレスが甘美かつ優雅な情緒的表現を完成したのに対し,彼は激しい感情表現によって人物の内面性を追究し,その様式はのちの彫刻に多大の影響を与えた。現存する作品に前4世紀中頃に彼が再建したと伝えられるテゲアのアテナ=アレア神殿の破風彫刻 (アテネ国立考古学博物館) ,エフェソスのアルテミス神殿の浮彫のある円柱 (大英博物館) ,ハリカルナッソスのマウソレイオンの東面フリーズ (同) ,『陶酔のマイナス』 (ローマ時代模刻,ドレスデン国立絵画館) ,『メレアグロス』 (同,バチカン美術館) などがある。

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