タネツケバナ(英語表記)Cardamine flexuosa With.

改訂新版 世界大百科事典 「タネツケバナ」の意味・わかりやすい解説

タネツケバナ
Cardamine flexuosa With.

水田跡や湿った土地に,冬から春にかけて普通に見られるアブラナ科越年草。茎は高さ10~30cm,基部から多く枝を出して立ち上がり,基部近くは普通紫色を帯びて,多少毛がある。葉は羽状に分裂。花は春3~5月ころに開き,花弁は長さ3~4mm,白色で4枚。花が終わると花序は伸長し,長さ2cm内外の棒状の果実多数つく。北半球に広く分布する。

 タネツケバナ属Cardamine(英名bitter cress)は,旧世界の温帯以北に100種以上が知られ,若葉が食用になるものも多い。

 オオバタネツケバナC.scutata Thunb.は山間谷川のほとりに多い多年草。タネツケバナに似て全体やや大型で,毛がない。四国の松山では葶藶(ていれき)という名で,早春に清水で栽培したものが店頭に並べられる。少し辛みがあり,クレッソンと同じように生で食べられる。日本全土,中国北部からカムチャツカにかけて分布する。コンロンソウC.leucantha(Tausch)O.E.Schulzは山の谷間に生える多年草で,茎は直立し,高さ30~70cm。地下に細い走出枝を出す。葉は羽状で5~7枚の小葉があり,小葉は長さ4~10cm,長楕円形で鋸歯がある。4~5月ころ,総状花序を作って十字形白い花を多数つける。花弁は長さ8~10mm。日本全土,朝鮮,中国北部,シベリア東部に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タネツケバナ」の意味・わかりやすい解説

タネツケバナ
たねつけばな / 種付花
[学] Cardamine scutata Thunb.
Cardamine flexuosa With.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の二年草。茎は高さ約30センチメートル、上方で分枝し、下方は普通は暗紫色を帯びて短毛がある。葉は互生し、羽状に深裂し、下方の葉は7~10枚の小葉に分かれ、頂小葉はやや大形。側小葉は狭長楕円(だえん)形から倒卵形。3~5月、茎頂に総状花序をつくり、白色の小花を10~20個開く。包葉はない。長角果は無毛で長さ約2センチメートル、熟すとはじけて2裂する。田畑や道端に普通にみられる雑草で、日本全土、および北半球の温帯に広く分布する。名は、苗代に種籾(たねもみ)を播(ま)くころ花を開くことに由来する。

 近縁のオオバタネツケバナC. regeliana Miq.はタネツケバナの大形のものに似るが、多年草で毛はほとんどなく、頂小葉は側小葉より著しく大きい。北海道から九州の山地の谷間の湿地に生え、朝鮮半島、中国東北部、シベリア、カムチャツカに分布する。

[小林純子 2020年11月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タネツケバナ」の意味・わかりやすい解説

タネツケバナ(種漬花)
タネツケバナ
Cardamine flexuosa; bitter cress

アブラナ科の二年草。アジア東部,ヒマラヤ,ヨーロッパ,北アメリカの温帯から暖帯に広く分布する。水辺の湿地や田のあぜなどに普通にみられる。茎は直立し,基部から分枝する。下部は通常暗紫色を帯びて短毛を生じる。葉は羽状に分裂し,頂小葉が最大。春早く,枝先に総状花序をなして白色で小型の十字形花をつける。果実は長角果で無毛,中に数個の種子を含む。和名は花の咲く時期が,ちょうど米の種籾を水に浸す頃であることによるという。

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百科事典マイペディア 「タネツケバナ」の意味・わかりやすい解説

タネツケバナ

アブラナ科の一〜二年草。日本全土,北半球の温帯に広く分布し,水田や川岸に多い。高さ10〜30cm,葉は羽状に全裂する。春,枝先に総状花序を出し,花弁は4枚,白色で長さ3〜4mm。後に長さ約2cmのナタネに似た果実を結ぶ。果実は熟すと裂開し,果皮がそり返って種子をとばす。

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