スティリコ(読み)すてぃりこ(英語表記)Flavius Stilicho

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティリコ」の意味・わかりやすい解説

スティリコ
すてぃりこ
Flavius Stilicho
(365ころ―408)

西ローマ帝国の将軍。ローマ人の母とゲルマン民族のバンダル人の父との間に生まれる。テオドシウス1世宮廷に仕え、数々の戦功をたてて昇進し、皇帝の姪(めい)セレナを妻とした。帝国の東西分治後、スティリコは2人の娘を相次いで西帝ホノリウスの妻とし、自身は西帝国の全軍最高司令官として絶大な権力を振るった。当時ゲルマン民族の本格的移動が始まっていたが、彼は帝国の防衛に努め、アラリックの率いる西ゴートの進出に対しては、マケドニアダキアの支配権をめぐって対立していた東帝国側のたび重なる妨害にもかかわらず、たびたびこれを撃破し、ついにポレンティア(402)とベロナ(403)でアラリックの軍を打ち破り、イタリアから退却させた。さらに405年、ラガダエススの率いる20万以上のゲルマン人大軍を撃退した。

 その後、スティリコはアラリックと結んで東帝国に対抗しようとしたが、まもなくバンダル人、スエビ人、アラマン人などの侵入が起こり、さらにブリタニア軍団の擁立した簒奪(さんだつ)帝コンスタンティヌスが勢力を広げ、西帝国の情勢は悪化した。他方スティリコとホノリウス帝との対立が強まり、スティリコが息子エウケリウスとホノリウス帝の異母妹ガッラ・プラキディアとの結婚を画策すると、これが息子を皇帝にしようとする野望との疑いがかけられ、さらに当時高まっていたゲルマン人に対するローマ人の反感もあって、408年に捕らえられ、処刑された。

[島 創平]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android