改訂新版 世界大百科事典 「スノキ」の意味・わかりやすい解説
スノキ
Vaccinium smallii A.Gray var.glabrum Koidz.
山地の林縁に生えるツツジ科の落葉低木。葉は広卵形でとがり,やや酸味があるので〈酢の木〉の名がある。果実は熟すと黒紫色になり,食べられる。茎は斜上してまばらに分枝し,高さ1mほど。葉は長さ2~4cm,幅1~3cm,細かな鋸歯がある。4~5月,前年の枝の葉のわきから短い花序を伸ばし,1~3個の花を下向きに開く。子房は下位。花冠は鐘形で長さ約6mm,白色で赤みを帯びる。果実は球形で径7mm,中に数個の種子がある。基本変種のオオバスノキV.smallii A.Grayは温帯上部から亜寒帯の林縁に生え,葉は長楕円形か楕円形で大きく,長さ3~8cm,幅1.5~3cm,裏の脈のわきに毛が多い。スノキは本州の関東地方以西の太平洋側,四国に分布し,オオバスノキは北海道,本州の東北地方と中部地方以西の日本海側に分布する。
スノキ属Vacciniumは北半球の寒帯から暖帯に広く分布し,300種ほどある。日本には17種あるが変化が多く,花冠裂片が反曲するアクシバ節,ツルコケモモ節,花冠が鐘形または壺形で落葉性のスノキ節,イワツツジ節,クロマメノキ節,花冠が鐘形で常緑性のシャシャンボ節,コケモモ節に分けられる。アクシバ節は幹が直立し,よく分枝して広がる低木で,東アジア,北アメリカに4種あり,日本にはアクシバV.japonicum Miq.が特産する。高さ20~50cm,葉は卵形でとがり,表は濃緑色。6~7月,新枝の葉のわきに1花をつける。花は帯紅白色で長さ約8mm,花冠は4裂し,開くと裂片は反転して外側に巻き,4個の葯が中央に突出する。果実は球形の液果で,赤く熟す。ツルコケモモ節は北半球の寒帯に広く分布し,3種が知られ,細い枝がミズゴケの上をはって四方に広がり,常緑性の小さな葉を互生する。ツルコケモモV.oxycoccus L.(英名small cranberry)は亜高山や寒地の湿原によく見られる。茎の太さは1mmほど,葉は長楕円形で鋸歯がなく,長さ1cm内外。夏,葉の腋(わき)に長い柄が直立し1花をつける。花は淡紅紫色,長さ約6mm,4裂し,開くと裂片は反転して巻き,4個の葯が突出する。液果は球形で赤熟し,径約1cm,食用とされジャムを作る。北アメリカのクランベリーV.macrocarpon Ait.(英名large cranberry)は果実が径1~2cmとなり,ジュースやジャム用に栽培される。
スノキ節は6種あるが,スノキのほかによく見られるものは,ウスノキとナツハゼである。ウスノキV.hirtum Thunb.はスノキによく似るが果実に5本の稜があり,熟すと紅色になる。北海道から九州までの山地の林中に生える,高さ1mほどになる低木。ナツハゼV.oldhami Miq.は日本全国の低地の乾いた林中に生え,細長い花序に多くの花がつく。果実は紫褐色であり,食べられるがあまり美味ではない。イワツツジ節はイワツツジV.praestans Lamb.のみからなる。細長い地下茎がはって広がり,地上茎は直立して高さ5~15cm,先に3~5枚の葉が集まってつく。葉の間に2~3個の花をつける。果実は球形,鮮紅色で美しく,観賞用に栽培される。本州中部・北部,北海道の亜高山針葉樹林に生え,カムチャツカ,ウスリーに分布する。
シャシャンボ節は東南アジアの熱帯から暖帯に分布し,10種ほど知られる。葉が厚く常緑で,花序には一般にやや大型の包葉がある。日本にはシャシャンボV.bracteatum Thunb.のほか,小笠原諸島に1種,琉球諸島に1種ある。シャシャンボは高さ2~3mとなり,密に小さな葉が茂り,夏,壺状鐘形の白色の花をつけ,果実は小さな球形で熟すと紫黒色となり,食べられる。千葉県以西の暖地の林中に生える。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報